フボヤマさんのいる世界をさらに膨らませていきましょう。フボヤマ世界の四大大会の3つ目のアトラス・クラウン選手権が決着となりました。その次の大会、東辰連邦でのエピソードです。前回:同じチーム。同じ国。/ 外伝より街の設定:東辰連邦版シルクロードの旅、ホルポラー碧陽ー皎安ー蒼京:この道の先は世界に続いている
I「「黄昏の湖都」ホルポラのビジュアル」
I「エピソードを書いて。実質アトラス選手団の話。一方そのころ、バルド、ハルヴァル、カグラ、レイヴンは、東辰のATLAS FORGEの出資する施設で、調整を行ってきた。ここはフボヤマも調整で利用する拠点。ここはアトラスのテクノロジーを駆使したトレーニングや調整、迷いの森からアトラス・クラウンに向けた選手の回復を手助けするような環境もそろっていた。ある選手は会場の分析やデータを見て、裏方と戦い方の話をしており、あるものは東辰の食事を楽しんでリフレッシュし、あるものは当日に向けて体を仕上げていた。」
A
東辰連邦――
山と川に囲まれた静かな盆地に、ATLAS FORGEが出資する総合調整施設がある。
外観は質素だった。
過度な威圧感も、企業ロゴを誇示する装飾もない。
だが一歩中に入れば、そこは世界の頂点を前提に設計された空間だった。
バルド・グラウフェン
バルドは、床に敷かれた衝撃吸収素材の上で、黙々とスイングを繰り返していた。
天井からはセンサーが伸び、
彼の体重移動、蹄の接地角、肩甲骨の開閉まで、数値として即座に壁面へ投影される。
「……ここ、まだ流れてるな」
担当エンジニアが言うと、
バルドは一度だけ頷いた。
アトラス・クラウンでは、
力だけでは勝てないことを思い知らされた。
だからこそ今は、
パワーを抑え、通す力を磨く。
牛系獣人にとって“抑える”という行為は本能に逆らうものだ。
それでも、バルドは迷わなかった。
――フボヤマに追いつくために、必要な工程だ。
ハルヴァル・スコルドリク
別室では、ハルヴァルが東辰の料理を前にしていた。
湯気の立つ定食。
発酵した穀物、柔らかく煮込まれた肉、香草の香り。
「……悪くないな」
狼系獣人の鋭い嗅覚が、
この土地の“落ち着き”を拾っている。
アトラスの人工的な環境より、
ここは少し、人の暮らしに近い。
彼は知っていた。
自分はフボヤマほど完成されていない。
だが、だからこそ――
「焦らなくていい」
噛み締めるように、そう呟く。
体を休め、
感覚を戻し、
次に備える。
それもまた、戦い方のひとつだ。
カグラ・リュウエン
解析室では、カグラが巨大なホログラムの前に立っていた。
アトラス・クラウンの最終ラウンド。
風向、湿度、芝の摩耗、ショット選択。
すべてが再現され、
一打一打が、色付きの軌跡として浮かび上がる。
「……ここだ」
彼は、あるホールで指を止めた。
ほんのわずかな判断の遅れ。
それが順位を決めた。
「次は、同じミスはしない」
横で聞いていた分析担当が頷く。
ここでは、
悔しさがデータに変換される。
感情を、次の勝利へつなぐための場所。
それが、この施設だった。
レイヴン・ソル=ヴァレンティス
トレーニングフロアの端。
レイヴンは、一人で軽く体を動かしていた。
激しい動きではない。
呼吸、姿勢、軸。
フボヤマが使うのと同じ器具。
同じ床。
同じ空気。
「……ここに、あの人が立っていたのか」
言葉には出さなかったが、
胸の奥がざわつく。
アトラス・クラウンで見た背中。
勝ちを取りにいく、最後の一打。
――技術だけじゃない。
――覚悟だ。
レイヴンは、拳を軽く握る。
自分はまだ、途中だ。
だが、この場所は、途中の者を拒まない。
それを、身をもって知った。
共通するもの
この施設には、国境も、種族の壁もない。
ある者は戦術を詰め、
ある者は食を楽しみ、
ある者は体を仕上げ、
ある者は、ただ静かに考える。
すべてが、
次の舞台に立つための準備だった。
そして、彼らは理解している。
ここは――
フボヤマが、
勝者であり続けるために使ってきた場所。
同時に、
次の勝者を生むための場所でもある。
東辰の夜は静かだった。
だがその静けさの下で、
確かに、次の戦いは始まっていた。
I「エピソードを書いて。公開練習に臨むアズラ=ヴァル勢。 みな、もくもくと調整し、見た目の威圧感がある選手も多いので、報道チーム、一般人も委縮していた。 途中で、セリオスが気をきかせてみていた子供たちにアズラ=ヴァル選手たちのサインの寄せ書きをプレゼント、そこにイシュ=カイナも加わり、柔らかい雰囲気に。 バル=モルドゥンは体に子鳥が止まっており、鳥に気をつかってじっとしている。 子供と関わりたいけど距離感がわからず、遠くで棒立ちしてみているトルガン。 淡々と調整しながら、子供たちの声援に小さく手を振るゼファル。」
A
公開練習日。
東辰連邦の練習場に姿を現したアズラ=ヴァル勢は、入場した瞬間から空気を変えた。
巨体、角、鱗、鉱石のような皮膚。
誰もが一目で「強者」とわかる佇まい。
報道チームは距離を測り、
一般客は思わず声を落とした。
威圧しているつもりは、誰にもない。
ただ――彼らは本番を前提に、黙々と仕上げているだけだった。
静かな調整
ゼファルは、淡々と球を打つ。
無駄な動きはなく、呼吸すら一定。
ショットの合間、
フェンスの向こうで手を振る子供たちに気づくと、
ほんの一瞬だけ視線を向け、小さく手を振り返した。
それだけ。
だが子供たちは、息を呑んで喜んだ。
石の巨体と小さな命
バル=モルドゥンは、
ショットの途中で完全に動きを止めていた。
肩のあたり――
いつの間にか、小さな子鳥が止まっている。
「……」
誰も声をかけない。
本人も、動かない。
巨体のゴーレムは、
まるで石像のように静止したまま、
鳥が自分から飛び立つのを待っていた。
その様子を見ていた子供が、
小さく「すごい……」と呟く。
強さとは、壊さないことでもある――
そんな空気が、そこにあった。
距離の取り方がわからない男
トルガンは、少し離れた場所に立っていた。
腕を組み、背筋を伸ばし、
明らかに「近づくと怖い」見た目。
子供たちが視線を向けると、
彼は一瞬だけ目を見開き、
どう反応していいかわからず、そのまま固まる。
――行きたい。
――でも、近づいて泣かれたらどうする?
結果、
遠くで棒立ち。
それを見て、
セリオスが小さく苦笑した。
空気を変えた一歩
セリオスは練習を一度切り上げ、
フェンスの方へ歩み寄った。
「よかったら、サインを集めてみないか?」
子供たちは一瞬、戸惑い、
次の瞬間、一斉に頷いた。
セリオスは寄せ書き用の色紙を差し出し、
近くにいた選手たちに声をかける。
ゼファル、バル=モルドゥン、
少し遅れてトルガンも、恐る恐る近づく。
そこに、
イシュ=カイナが自然に加わった。
「名前、ここでいい?」
子供の目線に合わせ、
柔らかく話しかける。
空気が、明らかに変わった。
威圧の正体
サインが埋まった色紙を抱え、
子供たちは笑顔で戻っていく。
報道チームの一人が、ぽつりと言った。
「……怖いんじゃなくて、真剣なんですね」
セリオスは振り返らずに答える。
「戦う準備をしているだけだよ」
アズラ=ヴァル勢は、再び持ち場に戻る。
黙々と。
だが先ほどより、
フェンス越しの視線は、少し温かくなっていた。
強さは、
遠ざけるものではない。
そう気づいた午後だった。
I「エピソードを書いて。シルヴァエルド勢、練習を終えて東辰の自然を満喫してリフレッシュ。」
A
夕方、練習を終えたシルヴァエルド勢は、クラブを置き、東辰の自然へと足を伸ばした。
整えられたコースを離れると、
そこには人の手が入りすぎていない、穏やかな里山が広がっていた。
森ではない森
エルディオンが、深く息を吸う。
「……森だが、我々の森とは違うな」
木々は高すぎず、
枝葉は密集しすぎず、
光が素直に地面へ落ちている。
「管理されているが、支配されていない」
と、シルファリオが言う。
シルヴァエルドの森は、
守るべき聖域であり、誇りであり、試練の場だ。
だが、ここは違う。
人も、獣も、異種族も、
同じ場所に“居ていい”空気がある。
川辺の時間
小川のそばで、リュシアが靴を脱いだ。
「冷たい……でも、気持ちいい」
水は澄み、
流れは速すぎず、
足元の石が丸く磨かれている。
「迷いの森では、こうはいかないな」
とエルディオンが笑う。
「あそこは、油断した瞬間に飲み込まれる」
「ここは……休ませてくれる」
言葉にすると、
どこか敗北を認めるようで、
だが誰も否定しなかった。
何も背負わない時間
しばらくの間、
誰もゴルフの話をしなかった。
風の音。
水のせせらぎ。
遠くで鳴く鳥。
シルファリオが、ふと空を見上げる。
「……ルシウスなら、こういう場所でも集中できるんだろうな」
羨望とも、尊敬とも違う。
事実を述べただけの声。
「だが、我々は我々だ」
とエルディオン。
「森の王者ではない」
「それでも、森の子だ」
リュシアが頷く。
「だから、迷いの森で戦える」
「だから、アトラスでも恥じない」
東辰という場所
帰り道、
地元の人々が畑仕事を終え、手を振ってくる。
誰も有名人として扱わない。
だが、拒絶もない。
「不思議な国だな」
とシルファリオ。
「強さを誇示しない」
「弱さも、隠さない」
エルディオンが静かに言った。
「……こういう場所があるから、世界は回るのだろう」
宿に戻るころ、
身体は軽く、
心はさらに軽くなっていた。
明日から、また戦いが始まる。
だがこの一日は、
確かに彼らを“人”に戻していた。
シルヴァエルドの誇りを背負ったまま、
ほんの少しだけ、それを下ろせる時間。
東辰の自然は、
静かに、それを許していた。
I「エピソードを書いて。東辰の酒場ではフボヤマの凱旋と、地元の大会、そして今年はフボヤマが四大大会の3つを制し、WGT始まって以来の、初のグランドスラムがみえていることが話題になって、盛り上がっていた。一方で、アルヴァリアでは、権威層がフボヤマの年間グランドスラムを何としても阻止せよと、本部常駐チームに殴り込んでいた(ことばで)。」
A
東辰連邦・夜
——酒場「青燈(せいとう)」
木の扉を押し開けるたび、
香ばしい炭の匂いと、発酵酒の甘い香りが混じり合って流れ出す。
杯が鳴り、笑い声が弾ける。
「聞いたか? フボヤマ、また勝ったらしいぞ」
「“また”じゃねえよ、三つ目だ」
「四大大会の、だろ?」
誰かが指を三本立てると、
周囲が一斉にどよめいた。
「グランド・エルディア」
「アグナス杯」
「アトラス・クラウン」
「残り一つ……」
言葉に出した瞬間、
酒場の空気が一段、熱を帯びる。
「——グランドスラムだ」
「WGT始まって以来、誰もやってねえ」
「異種族も人間も関係なしだ」
「東辰のケンタウロスが、だぞ?」
年配の男が杯を掲げる。
「うちの倉で働いてた親父の息子だ」
「特別な家柄でも、エリートでもない」
若いケンタウロスが声を張る。
「普通の学校! 普通の飯! 普通の家!」
「なのに世界一だ!」
「普通だからだろ」
と、別の客が笑う。
「普通に積み上げた」
「だから、誰にも崩せねえ」
誰かが言った。
「次は……リュミナ=オルド、だったか」
「最後の四大大会」
一瞬の静寂。
そして、爆発するような歓声。
「勝て!!」
「行け!!」
「やれ!!」
誰も“止めろ”とは言わない。
誰も“重い”とも言わない。
それが、東辰の空気だった。
アルヴァリア王国・深夜
——ゴルフ連盟本部・常駐チーム会議室
重い扉が、乱暴に開かれた。
「——どういうことだ」
低い声。
だが、怒気は隠されていない。
「三つだ」
「三つ、取らせた」
円卓の向こう、
本部常駐チームの責任者が静かに立つ。
「事実です」
「しかし——」
「しかしではない」
別の権威層が机を叩く。
「WGTの象徴が、異種族一色になるなど——」
「ましてや、アトラスと結びついた存在が!」
「“アトラス版の英雄”だ」
「連中はそう喧伝している」
「止めろ」
「何としてもだ」
責任者は、言葉を選んだ。
「……阻止するには」
「正面から、勝つしかありません」
「分かっている!」
「だからこそ、だ!」
「リュミナ=オルド」
「あそこは“人間に不利ではない”」
「準備を総動員しろ」
「データ、資金、人材、すべてだ」
「——フボヤマに、
“歴史”を与えるな」
沈黙。
その沈黙の中で、
誰もが理解していた。
これはスポーツではない。
戦争だ。
誇りの戦争。
象徴の戦争。
そして——
勝てば語り継がれ、
負ければ消える戦争。
そして、世界は同時に動く
東辰の酒場では、
誰かが笑って言った。
「勝っても負けても、酒はうまい」
アルヴァリアの会議室では、
誰かが低く呟いた。
「……負けるわけには、いかない」
同じ夜。
同じ世界。
だが、
見ている未来は、まるで違っていた。
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