OL佐藤由奈さん編_メイキング4_エピソード9、ゆっくり動き出す
前回は、Aの設定にでてきた由奈の初恋の人につなぐべく、同姓同名の別人を登場させておきました。そういう人がいたら、追いかけたくなるでしょう。追いかけた結果見つかるもすれ違う、というエピソードを作ります。由奈のなかにもやもやをつくって、物語を動かそうとしています笑。佐藤由奈さん編、前回
I「由奈を描いて「帰り道のいつもの駅で、もしかしたら中学の時の初恋の相手の高橋恒一さんがいないかなと、つい目ですれ違う人の顔を見る由奈。実はこの夏に実家に帰省した時、母との何気ない会話の中で、高橋恒一が自分と同じ路線を使っていることは知っていた。東京の地下鉄なので、人は多い」」
I「由奈を描いて、「そして高橋恒一さんのような面影の人を見つけた。しかし、その人は由奈と別の方向の電車に乗り込んで、電車のドアが閉じてしまった」、この時の由奈の表情を描いて。」
I「エピソードを予想して文章で書いて。この日の由奈はどんな風に帰宅する?いつもはそのままいきつけのデパートに向かい、スイーツを買うのだけど。今日はどうかな?高橋恒一さんらしき人は逆方向の電車に乗って、もう出発してしまった。今日は金曜日、ちょうど秋のシルバーウィークで連休につながるよ。明日は仕事はない。由奈が帰宅するまでのエピソードを考えて。」
A「いい流れですね。では、この日の由奈が駅を出て、家に帰り着くまでを、静かな余韻を残すエピソードとして書きます。」
電車のドアが閉じたあとも、由奈はしばらく、その場から動けなかった。
発車ベルが鳴り、風圧と一緒に、反対方向の電車がホームから離れていく。
ガラス越しに見えた横顔は、もう人の波に紛れて分からない。
「……違う、よね」
小さく息を吐いて、由奈は視線を落とした。
胸の奥に、きゅっとした感覚が残っている。
会えたわけでも、話したわけでもないのに、何かを見逃したような気分だけが残る。
次に来た自分の電車に乗り込み、吊革をつかむ。
金曜日の夕方、シルバーウィーク前。
車内はいつもより少しだけ浮ついていて、スーツの人も、私服の人も混ざっている。
由奈は窓に映る自分の顔をぼんやり見た。
仕事の顔はもうほどけている。
でも、完全にオフにもなりきれていない。
——今日は、デパートに寄らなくてもいいかもしれない。
いつもなら、無意識に体が向かうルート。
仕事帰りのご褒美に、スイーツを選ぶ時間。
でも今日は、甘いものよりも、静かな時間がほしかった。
最寄り駅で電車を降り、改札を抜ける。
外に出ると、夜風が少しだけ涼しい。
夏の終わりと秋の始まりの、ちょうど境目の匂いがした。
由奈はそのまま、寄り道をせずに歩き出す。
通い慣れた道。
朝、猫に会った場所を通り過ぎながら、今日はもう姿がないことに気づく。
「……そっか」
誰に言うでもなく、つぶやく。
家に着く頃には、心のざわつきは、だいぶ落ち着いていた。
玄関で靴を脱ぎ、明かりをつける。
いつもの部屋。
いつもの静けさ。
バッグを置いて、ソファに腰を下ろすと、
ようやく今日一日が終わった実感が湧いてきた。
——明日は、休み。
そう思っただけで、肩の力が抜ける。
会えなかった人の面影は、まだ頭の片隅に残っているけれど、
それを追いかけるほど、由奈はもう若くも、焦ってもいなかった。
冷蔵庫を開けると、
この前買った小さな焼き菓子が一つ、目に入る。
「……今日は、これでいいかな」
由奈はそれを取り出し、ケトルに水を入れる。
甘さは控えめ。
でも、ちゃんと“今日を終わらせる味”。
湯が沸く音を聞きながら、由奈は思う。
会えなかったことも、
すれ違ったことも、
きっと今日という一日の一部なんだ、と。
金曜日の夜は、静かに、穏やかに、
由奈の部屋に降りてきていた。
電車のドアが閉じたあとも、由奈はしばらく、その場から動けなかった。
発車ベルが鳴り、風圧と一緒に、反対方向の電車がホームから離れていく。
ガラス越しに見えた横顔は、もう人の波に紛れて分からない。
「……違う、よね」
小さく息を吐いて、由奈は視線を落とした。
胸の奥に、きゅっとした感覚が残っている。
会えたわけでも、話したわけでもないのに、何かを見逃したような気分だけが残る。
次に来た自分の電車に乗り込み、吊革をつかむ。
金曜日の夕方、シルバーウィーク前。
車内はいつもより少しだけ浮ついていて、スーツの人も、私服の人も混ざっている。
由奈は窓に映る自分の顔をぼんやり見た。
仕事の顔はもうほどけている。
でも、完全にオフにもなりきれていない。
——今日は、デパートに寄らなくてもいいかもしれない。
いつもなら、無意識に体が向かうルート。
仕事帰りのご褒美に、スイーツを選ぶ時間。
でも今日は、甘いものよりも、静かな時間がほしかった。
最寄り駅で電車を降り、改札を抜ける。
外に出ると、夜風が少しだけ涼しい。
夏の終わりと秋の始まりの、ちょうど境目の匂いがした。
由奈はそのまま、寄り道をせずに歩き出す。
通い慣れた道。
朝、猫に会った場所を通り過ぎながら、今日はもう姿がないことに気づく。
「……そっか」
誰に言うでもなく、つぶやく。
家に着く頃には、心のざわつきは、だいぶ落ち着いていた。
玄関で靴を脱ぎ、明かりをつける。
いつもの部屋。
いつもの静けさ。
バッグを置いて、ソファに腰を下ろすと、
ようやく今日一日が終わった実感が湧いてきた。
——明日は、休み。
そう思っただけで、肩の力が抜ける。
会えなかった人の面影は、まだ頭の片隅に残っているけれど、
それを追いかけるほど、由奈はもう若くも、焦ってもいなかった。
冷蔵庫を開けると、
この前買った小さな焼き菓子が一つ、目に入る。
「……今日は、これでいいかな」
由奈はそれを取り出し、ケトルに水を入れる。
甘さは控えめ。
でも、ちゃんと“今日を終わらせる味”。
湯が沸く音を聞きながら、由奈は思う。
会えなかったことも、
すれ違ったことも、
きっと今日という一日の一部なんだ、と。
金曜日の夜は、静かに、穏やかに、
由奈の部屋に降りてきていた。
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