OL佐藤由奈さん編_メイキング6_エピソード22、ずっと心のどこかが落ち着かない
前回は、友達 (花菜) とカフェで会って話をするエピソードです。それを受けて、翌日に初恋の人と会う約束があるのですが、それまでどんなふうに由奈は過ごすのかを描いていきます。由奈の心の揺れを描写することを意識してました。
I「家に戻り、着換えてから、ジョギングする由奈を描いて。季節は10月頭くらい、時間は19時くらいにしよう。」
I「この続きの由奈を描いて。更に長く走った。迷いもあったせいか、息があがるまでしっかり走っている。」
I「由奈を描いて。走り終わって、歩いてうちに向かう由奈。息はあがっている。歩きながら汗をぬぐう。」
I「晩御飯を食べる由奈を描いて。昨日の残り物のようだ。」
I「ご飯を食べ終わった後、テレビを見ながら考える由奈。明日はいよいよ。由奈の気持ちを文章で書いてみて。由奈がしゃべってるような感じで」
A
……ふぅ。
(テレビをつけたまま、ソファーに座ってぼんやり画面を眺めながら)
「なんか、全然頭に入ってこないな……」
さっきまで普通にご飯食べてたのに、食器片づけたら一気に静かになって、やっと“明日”が近づいてきた感じがする。
明日、会うんだよね。
高橋恒一くん。
中学のころの記憶なんて、もうだいぶ輪郭がぼやけてるはずなのに、
名前を聞いた瞬間から、ずっと心のどこかが落ち着かない。
「期待しすぎるのは違うよね……うん、ただの再会。たまたま連絡先交換して、たまたま時間が合っただけ」
そう言い聞かせても、
スマホを置いたテーブルを、つい何度も見ちゃう。
明日は日曜の夕方。
仕事じゃない。時間に追われない。
だから余計に、逃げ場がない感じがする。
「……でもさ」
花菜と笑って、走って、汗かいて、
最近ちょっとずつ、自分の気持ちから目をそらさなくなってきてるのも事実で。
弟が結婚の話をして、
実家でいろんな顔を見て、
あの喫茶店で、あの空気を吸って。
「私、ちゃんと考えなきゃいけないとこに来てるのかも」
テレビから聞こえる笑い声が、少し遠く感じる。
明日、会って、
何が起きるかなんて分からないし、
何も起きないかもしれない。
でも。
「……何も起きなかったとしても、それでもいい」
ちゃんと自分の目で見て、
ちゃんと話して、
ちゃんと“今の自分”で向き合えたら。
それだけで、たぶん一歩なんだと思う。
「……よし」
今日は早めに寝よう。
明日に備えて。
そう思いながら、リモコンを手に取って、
テレビの音量を少し下げた。
I「この後、由奈は布団に入り、寝ることにした。これを踏まえて由奈の寝顔を描いて。」
I「エピソードを考えて。由奈は朝目覚めて顔を洗う。休日なので、仕事がある日より遅い時間、朝9時過ぎくらいにおきた。口元が緩いせいか、がっつりよだれがたれたようで、顔と枕にはしっかりはっきりよだれの跡(という状態でむかえる大事な日のはじまり)。朝起きて、顔を洗いに行き、朝ご飯の準備を始めるまでのお話。」
A
由奈は、カーテン越しの光で目を覚ました。
時計を見ると、9時を少し回っている。休日らしい時間だ、と一瞬ほっとしたあと、胸の奥が小さく跳ねる。今日は――大事な日だ。
身体を起こした瞬間、違和感に気づく。
枕元が、やけに冷たい。
「……あ」
鏡を見るまでもなく察して、由奈は苦笑いした。口元がゆるみやすい自覚はあるけれど、今日は特にひどかったらしい。頬の端から顎にかけて、はっきりとしたよだれの跡。枕にも、逃げ場のない証拠が残っている。
「よりによって、今日かあ……」
小さく呟きながら、寝ぼけたまま洗面所へ向かう。
蛇口をひねり、少し冷たい水で顔を洗うと、ようやく頭が現実に戻ってくる。何度か丁寧にすすいで、タオルで押さえるように水気を取る。鏡の中の自分は、まだ少しむくんでいるけれど、眠気はだいぶ引いていた。
歯を磨き、髪を軽く整える。
洗面所を出るころには、心拍が少しだけ速くなっているのがわかる。
キッチンに立ち、冷蔵庫を開ける。卵、パン、昨夜の残りの野菜。
いつもと変わらない朝ご飯の材料なのに、今日は指先の動きが慎重だ。トースターをセットし、フライパンを出しながら、由奈は深く息を吸った。
――落ち着こう。
ちゃんと、今日を始めよう。
さっきまでの気の抜けた寝顔も、枕のよだれ跡も、もう過去だ。
フライパンが温まりはじめる音を聞きながら、由奈は少しだけ背筋を伸ばした。大事な一日は、こうして、いつも通りの朝ご飯の準備から静かに始まっていく。
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