OL佐藤由奈さん編_メイキング6_エピソード24、まだ名前のつかない、続きの予感
前回は、デート回になります。デートが終わり、由奈は何を思うのか。やっぱり揺れるので、そういう部分を描いていければと思います笑。
I「このエピソードの「電車に揺られながら、窓に映る自分の顔を見る。」由奈を描いて。表情はエピソードを踏まえて。時間は夜だろうね。」
I「帰り道の由奈の気持ちを書いて。家に向かうエピソードとして。」
A
(……終わったんだ)
そう思うと、ほっとしたような、でもどこか名残惜しいような、不思議な気持ちが胸に残った。
特別なことは何も起きていない。
告白もなければ、約束を重ねたわけでもない。
ただ、同じ時間に同じものを食べて、少し話して、別れただけ。
それでも――
由奈は、さっきまでいた定食屋の灯りを思い出す。
焼き魚の湯気。
会話の合間の沈黙。
自分が慌てて口元を拭いたときの、あの一瞬。
(見られた……よね)
恥ずかしさが今さらじわっと込み上げてきて、思わず頬を押さえる。
でも同時に、恒一の反応を思い返す。
特別なことは言われなかった。
からかわれることも、気まずくされることもなかった。
(……気にしてない、んだよね)
その事実が、少しだけ救いだった。
電車に揺られながら、窓に映る自分の顔を見る。
いつもと変わらないはずなのに、目だけが少し落ち着かない。
でも、嫌な感じではない。
(また話そう、か)
社交辞令かもしれない。
でも、あの言葉があっただけで、今日が「何もなかった日」ではなくなった気がする。
家の最寄り駅に着き、改札を抜ける。
夜の住宅街は静かで、遠くで犬の鳴く声がした。
鍵を取り出しながら、由奈は小さく思う。
(急がなくていい、のかも)
答えを出す必要はない。
何かを決めなくてもいい。
今日はただ、ちゃんと家に帰って、眠ればいい。
玄関のドアを閉めた瞬間、
由奈はもう一度だけ、深く息を吐いた。
その胸の奥には、
不安と一緒に、ほんの小さな、あたたかい灯りが残っていた。
I「この後、家に着いた後の由奈のエピソードを考えてみて。誰かに電話したりとか、スイーツを食べたりするだろうか?あるいは誰かから電話がかかってきたりするだろうか?考えてみて。この時点では恒一からは次の約束はしてなく、由奈からもそういう連絡をまだしていないもよだれのとする。よだれの件は由奈はまだ引きずっていると思う。書いてみて。」
A
家に着いて玄関の鍵を閉めた瞬間、由奈はようやく大きく息を吐いた。
靴を脱いで、いつもの位置に鞄を置く。その一連の動作が、少しだけぎこちない。
「……つかれた……」
口に出してみて、ようやく実感が追いつく。
楽しかった、と思う。会話は途切れ途切れだったし、沈黙も多かった。でも、嫌ではなかった。むしろ、あの静かな感じは心地よかった。
ただ——。
洗面所に行って、無意識に鏡を見てしまう。
そこに映る自分の口元を見た瞬間、胸の奥がきゅっと縮んだ。
「……よりによって、なんであれなの……」
定食屋でのことが、どうしても頭から離れない。
気づかないふりをしていたけれど、確かに恒一は見ていた。
気にしていない、そう分かっていても、自分の中では「なかったこと」にはならない。
部屋着に着替えてソファに座ると、スマホを手に取る。
通知は、ない。恒一からも、誰からも。
一瞬、花菜に電話しようかと思う。
「今日どうだった?」と聞かれたら、きっと全部話してしまう気がする。
でも、今は言葉にすると余計に恥ずかしくなりそうで、画面を伏せてテーブルに置いた。
代わりに、冷蔵庫から小さなヨーグルトを出す。
甘いものをがっつり食べる気分でもない。スイーツで気持ちを切り替えるには、今日は少しだけ気持ちが揺れている。
スプーンを口に運びながら、ぼんやり天井を見上げる。
「……また、話そうね、って言ってたし……」
社交辞令かもしれない。
でも、完全な終わりでもなかったはずだ。
そう思おうとして、すぐに思考がよだれの記憶に引き戻される。
一人で苦笑して、ヨーグルトの蓋を閉じた。
シャワーを浴びて、髪を乾かして、布団に入る。
スマホは枕元に置いたまま、画面は伏せている。
今日はもう、見ないと決めた。
布団の中で丸くなりながら、由奈は小さくつぶやく。
「……次、もし会うなら……ちゃんと口、閉じよう……」
自分でも可笑しくなって、少しだけ笑ったあと、
そのまま静かに目を閉じた。
胸の奥に残るのは、恥ずかしさと、わずかな安心感と、
まだ名前のつかない、続きの予感だった。
I「このエピソードの「冷蔵庫から小さなヨーグルトを出して、そのヨーグルトを食べる由奈」を描いて」
I「由奈を描いて「風呂に入り、髪をとかした後、部屋着に着換えて、布団で寝る由奈。次、もし会うなら……ちゃんと口、閉じようと思ったが、今がっつり口を開けて寝ている。これは無意識。手は少なくとも片手は布団の外にでていて、肩より高い位置にあがっている」」
I「エピソードを考えて「朝起きて目を覚ます由奈。ますはうとうとしてぼんやりする由奈。昨日の件があったそばから、おきたら今朝もがっつりよだれをたらしたようで、口元と枕には今日もよだれの跡。はっとして、布団をでて顔を洗う。かえってスマホをみると、恒一から、きのうはありがとうございました。楽しかったです。また話しましょうと短いメッセージが入っていた。これに返信する由奈。」」
A
――朝。
目は開いているのに、意識はまだ布団の奥に沈んだまま。
由奈は仰向けのまま、天井をぼんやり見つめていた。
(……朝、だ)
体は重い。夢の続きを探すみたいに、しばらく瞬きだけを繰り返す。
ふと違和感があって、視線を落とした。
――あ。
枕の端に、はっきり残った濡れた跡。
口元も、少し冷たい。
「……また、やってる」
昨日あれだけ「次はちゃんと口閉じよう」って思ったのに。
思わず眉をひそめて、勢いよく布団をはねのける。
顔を洗いに行く途中、まだ少しふらつきながら、洗面所の鏡に映る自分を見た。
寝起きの顔。目は半分、髪は跳ねて、口元には水で流してもすぐ消えない“証拠”。
「……はぁ」
冷たい水で顔を洗うと、ようやく頭がはっきりしてきた。
部屋に戻り、スマホを手に取る。
通知は一件。
画面を見た瞬間、心臓が小さく跳ねた。
――高橋恒一
《きのうはありがとうございました。楽しかったです。また話しましょう。》
短い、でも丁寧な文章。
事務的とも言えるのに、不思議と温度がある。
由奈は、しばらくその画面を見つめたまま動かなかった。
(……見てた、よね。あれ)
(でも、それでも……楽しかった、って)
指先が少しだけ震える。
深呼吸して、画面に文字を打ち始めた。
《こちらこそ、ありがとうございました。
久しぶりで緊張しましたけど、楽しかったです。
また、ぜひ》
送信。
画面が静かになってから、由奈はふっと息を吐いた。
「……よし」
昨日のことは、もう消せない。
でも、今朝は今朝。
洗い立ての顔に、少しだけ力が戻る。
由奈はカーテンを少し開けて、朝の光を部屋に入れた。
(ちゃんと、続いてる)
そう思えただけで、今日の朝は少しだけ、軽かった。
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