橘美月シリーズ大学編_#23(……なんなんだろ、あの人)実習と、このグループの空気

橘美月シリーズは女子会もので、美月さんが大学生 (アップしている段階で阪大・薬・4年) の設定なので、本編とは別に美月さんの友達を作り、大学側も絡められるようにしておきましょう。メイド服などのありそうな服はメインモデルたちはある程度着てしまったので、サブのモデルを追加する意図があります笑

前回:「やっぱあれ、美月やんな?」「……地味」美月CM出演で揺れる

I「橘美月×笑顔×ストバス。プロンプトはこちら

I「良いね。この後、午後の授業は実習だった。彩音、美優、理央は同じ組 (グループ1としよう)、美月、栞、真帆、葵が同じようなテーマ(グループ3としよう)で区切られている。この時間は化学系の実習。

彩音、美優は同じ組。美優は前日泣いていた(皆には体調不良)ということもあるし、彩音はバイトやプライベートを優先していた結果、事前準備がほぼできておらず、戸惑う。対して、1組では理央と同班の工藤 (成績優秀側の男性) のグループがしっかり進んで、美優たちの前で教員から評価をされている。対して、彩音、美優らは注意されてしまう。九条ー工藤組は早々と自分たちのやることを終え、周りをサポートしている。彩音、美優も教員やアシスタント、理央等のサポートを受けるが、グループ1の中で一番遅い組になった。彩音はそういうの気にしない性格なので、笑い話にしていたが、美優は更に落ち込んでいた。対してグループ3では、美月らは一見普通に実習に取り組み、終える。葵が美月と栞の事前課題を覗いてみたら、二人とも成績上位層であることが伝わるクオリティ、そして美月の事前課題は更にクオリティが高い印象を受けた。実習中も、無難にこなして安定飛行という感じ。テーマの特性か、グループ3は特に大きくばらつくこともなく、全員が実習を終えた。この日、いつもの9人のグループラインで、終わったらフリースペースに待ち合わせにしていたのだが、一番早く切り上げてきたのは橋本、直人のハ行が入るグループで、美月らは2番目、一番遅くに彩音と美優らが合流して、美優は明らかに元気がない。そこに美優らをサポートしていた理央と工藤も同じ場所に来た。これを踏まえてエピソードを作って。

A

午後。

薬学部の実習室は、独特の緊張感に包まれていた。

白衣。
試薬。
ガラス器具。
そして、事前課題。

今日は化学系の実習だった。


今回の班分けは、

  • グループ1
     彩音、美優、理央、工藤 ほか
  • グループ3
     美月、栞、真帆、葵 ほか

という構成になっていた。


開始直後。

空気が分かれた。


「じゃ、ここ計算しとく?」

工藤が淡々と言う。


「お願い」

理央も自然に返す。


二人とも慣れている。

事前課題もほぼ完璧。

実験の流れも頭に入っている。


一方。


「え、待ってこれどこまでやった?」

彩音が白衣姿のまま固まる。


「……前処理の式変形」

美優が小声で言う。


「やば、そこ見てない」


彩音は笑っていた。

完全に準備不足だった。


最近は:

  • 飲み会
  • バイト
  • 旅行
  • 遊び

そちらを優先していた。


そして。

美優も精神状態が悪かった。

CMの件。
理央・葵との会話。
比較。
劣等感。

頭がまとまっていない。


「川崎さん、試薬量違う」

TAが指摘する。


「あ……すみません」


その横で。

工藤班はどんどん進む。


「はい、この段階でここまでできてる班はかなり良いです」

教員が理央たちを見て頷く。


「特に工藤くんの整理が綺麗だね」


「ありがとうございます」

工藤は淡々としている。


理央も自然体だった。

褒められることに慣れている。


その光景が、

美優にはきつかった。


(また……)


(また私は遅れてる)


彩音は違う。


「いやー無理!」

「なんで皆こんな早いん!」

「意味わからん!」


笑っている。

本気で笑い話に変換している。


でも。

美優は笑えなかった。


結局。

グループ1の中で、

一番最後まで残ったのは彩音・美優側だった。


理央と工藤は、

自分たちの作業を終えたあと、

他班のサポートに回っていた。


「ここ、多分こう」

理央が静かに教える。


「……ありがとう」

美優は小さく返す。


理央は悪気なく優秀だった。

だから余計に苦しい。


一方そのころ。

グループ3。


「ここ、反応熱出るから気をつけて」

美月が普通に言う。


「うん」

栞が頷く。


真帆は器具を扱いながら、

「今回は平和やな……」

と呟く。


葵は横目で見ていた。


この班、

妙に安定している。


派手ではない。

でも、

崩れない。


途中。

葵はちらっと美月と栞の事前課題を見る。


(……え)


まず栞。

丁寧。

綺麗。

理解している人のノート。


そして美月。


(これ……)


レベルが違った。


図。
補足。
反応機構。
注意点。


ただ解くだけじゃない。

“後から見返して理解できるように整理されている”。


しかも字が綺麗。


(なんなんこの人……)


しかも。

本人は普通に実習している。


「試験管そこ」

「ありがと」

「終わった?」

「もうちょい」


テンションも変わらない。


美月は、

“できる人感”を出そうとしていない。

でも、

隠しきれていない。


グループ3は特に大きな事故もなく終了した。


夕方。

いつもの9人は、

実習後フリースペース集合になっていた。


最初に来たのは、

橋本・直人側の班。


「終わったー」

「腹減った」


橋本はスポドリを飲み、

直人はスマホを見ていた。


「ドイツ語でなんか来てる?」

健太が聞く。


「うん」

直人が笑う。

「今日の晩飯写真送られてきた」


「ちゃんと彼氏やん」


その少し後。

美月、栞、真帆、葵組が到着。


「お疲れー」

彩音不在なので、

空気は比較的静か。


美月はいつも通り。

ノーメイク。
シンプルな服。
普通。


でも。

葵は今日の実習を見たあとだと、

その“普通”が逆に怖かった。


(この人、どこまでできるん……)


真帆が座る。

「今日平和やったわ」


「そっちは?」

橋本が聞く。


「普通」

美月が答える。

「特に何も」


栞が小さく笑う。

「美月基準やからなぁ……」


その十数分後。


彩音たちが来た。


「あ゛ーーー疲れた!!」

彩音は大声。


「今日ガチで終わった!」


でも。

隣の美優は、

明らかに元気がなかった。


顔色が悪い。

笑っていない。


健太が気づく。


「川崎、大丈夫か?」


「……うん」


声が小さい。


そこへ。

理央と工藤もやって来た。


「お疲れ」

理央が自然に声をかける。


工藤も軽く会釈。


そして。

理央の視線が、

自然に美月へ向く。


美月は普通に座って、

橋本が買ってきたお菓子を食べていた。


CMの主役。

全科目S。

実習も強い。


なのに。

全然“勝ちに来てる人”に見えない。


理央は静かに思う。


(……なんなんだろ、この人)

I「良いね。この後、理央が美月に化学系の実習の後だったので、美月に軽く勉強系でマウントをとってみるが、「九条さん凄いとかしっかり準備してるね」みたいな感じで、張り合ってくる様子が全くなかった。どこで勉強してるか聞いたら、家で普通に、とだけ返ってきた。家庭教師もそんなに頻度多くないので、生活に余裕がありそう。理央はここで(がり勉なのかな?くらいに思う)。

ここで彩音が、あのCMどれくらい儲かったのか聞いてきて、美月は前期分の家庭教師の稼ぎ以上その2倍以下くらいと答えた。彩音は驚いて羨ましい的な反応 (ただし、ネタとして消費している感じで、笑い話にしようとしている感じ)。美優は更に落ち込む。勉強の話が出てから、ずっと下を向いている。

ここで理央と工藤が加わり、彩音、健太が中心に雑談。話題が美月にCMの話を振った栞の父の話になり、国内の製薬会社の研究開発部長ということが出て、理央や工藤は少し驚いたリアクション。葵は大きく反応。CMは美月以外は声をかけられなかったかどうか聞かれたら、最初から美月にカ話が来てないようで、栞も知らなかったようだ。それを聞いて美優はますます落ち込む (選ばれてないと思っている)。そのまま撮影の話になって、本番は一発でOKだった (美月が企画側の想像以上に動けたのと、相手側のリアクションが素だったので、自然だしこれでいこうとなった笑)。美月としては、短期間で終わったのでコスパよかったみたいな感じ。その場で、芸能関係者何組かからスカウトされたようだが、全部断ったようだ。どういう人がスカウトしたかは美月は言わなかった (コンプラ的な意味もある)。そして葵が栞に父に紹介してというと、(栞父と一緒に釣りに行く仲の)橋本が、やめとけ、そういうのはこっちからたのむようなものじゃないだろ、的な対応。ここまでをエピソードにしてみて。

A

フリースペース。

実習終わりの空気が少し落ち着き始めた頃。


理央は、美月を観察していた。


CM。
全S。
実習も安定。

なのに、

“競争している感じ”がしない。


そこが気になった。


「橘さん」

理央が自然に声をかける。


「はい?」

美月は普通に振り向く。


「今日の実習、かなり準備してたよね」


軽い探り。

少し“勉強強者同士”の空気を作る。


「九条さんのほうがしっかり準備してたと思う」

美月は本当にそう思っている顔だった。


理央は少し止まる。


「……いや、でも橘さんもかなりやってたでしょ?」


「普通に家でやってただけだから」


「塾とか?」


「行ってない」


「予備校系?」


「行ってない」


「じゃあどこで勉強してるの?」


「家で普通に」


美月はあっさり答える。


理央は少しだけ眉を動かした。


(……家で?)


(全部?)


しかも。

生活に余裕がありそうだった。


家庭教師はしている。

でも毎日働いている感じではない。

飲み会も途中で帰る。

生活が崩れていない。


(……がり勉タイプ?)


理央はそう仮定する。

でも。

何か違和感が残る。


その時。

彩音が急に口を挟んだ。


「そういやさ!」


「CMいくらもらったん!?」


「おい」

真帆が笑う。

「聞き方」


でも彩音は気にしない。

「気になるやん!」


美月は少し考える。


「前期の家庭教師よりは多い」


「え」


「でもその二倍はいってないくらい」


数秒沈黙。


「……は???」

彩音が本気で叫ぶ。


「え、そんなもらえんの!?」


健太も吹き出す。

「夢あるな」


橋本が苦笑する。

「学生としてはデカすぎる」


彩音は机を叩きながら笑う。

「やば!!」

「私もCM出たい!!」


完全にネタ消費モード。


でも。

美優だけは笑えなかった。


下を向いたまま。


(前期の家庭教師以上……)


(しかも全国CM……)


(私は何してるんだろ)


比較が止まらない。


そこへ。

工藤も会話に加わる。


「でも製薬会社案件って普通に強いよな」


「栞のお父さんの会社なんでしょ?」

理央が聞く。


「うん」

栞が頷く。

「父、研究開発」


「どこの?」

工藤が聞く。


栞が会社名を出す。


理央と工藤の表情が少し変わる。


「……え、そこ?」


「大手やん」


葵も大きく反応した。


「え、めっちゃ有名やん!」


「そこのR&D部長ってかなり上じゃない?」

工藤が言う。


栞は少し困ったように笑う。

「まあ……長いみたい」


美優はまた下を向く。


(そういう世界とも繋がってるんだ……)


(やっぱり選ばれる人なんだ)


その時。

葵が興味津々で聞いた。


「CMって、美月さん以外にも声かかってたん?」


「いや」

栞が答える。

「最初から美月だったっぽい」


「え」

葵が止まる。


「私も後から知ったし」


「最初から……?」


つまり。

最初から。

制作側は。


“橘美月を指名した”


ということ。


美優の胸がまた沈む。


(私は最初から選ばれてない)


その感覚が離れない。


「撮影どうやったん?」

健太が聞く。


美月は少し思い出す。


「思ったよりすぐ終わった」


「一発OKだったらしい」


「なんで?」

橋本が聞く。


「企画側が思ってたより動けたみたいで」


「あと、相手役のリアクションが自然だったからこれで行こうって」


直人が笑う。

「本気で抜いたんだ」


「普通にびっくりしてた」


(笑)


「いや怖」

健太が笑う。


美月は本気で不思議そうだった。


「短期間で終わったからコスパ良かった」


「またそれ言う!!」

彩音が爆笑する。


その時。

葵が少し身を乗り出した。


「スカウトとかされんかった?」


「された」


空気が止まる。


「何社か」


「断ったけど」


「えぇー!?」

葵が叫ぶ。


「なんで!?」


「別にそこまで興味ないから」


即答。


理央ですら少し固まる。


芸能。

全国CM。

スカウト。

普通なら人生が動く話。

でも美月は、

“飲み会断るくらいの温度感”

で断っている。


「どこにスカウトされたん?」

葵が聞く。


「それは言わない」


「なんでー!」


「コンプラ的に」


普通に返す。


すると。

葵が勢いで言った。


「えー栞ちゃん、お父さん紹介してよ!」


「え?」

栞が止まる。


そこへ。

橋本が先に反応した。


「やめとけ」


空気が少し止まる。


橋本は静かに続けた。


「そういうのって、こっちから頼むもんじゃないだろ」


「向こうから声かかるから意味あるんだし」


その言い方は、

責めてはいない。

でも、

線引きははっきりしていた。


葵は少し気まずそうに笑う。

「まあ、そうか」


理央はそのやり取りを静かに見ていた。


美月グループには、

独特の空気がある。


  • 利用しない
  • 消費しない
  • 無理に踏み込まない

その距離感が、

理央には少し不思議だった。


そして。

美優は、

その空気の中にいる自分が、

急に遠く感じていた。

I「良いね。この後、ある程度雑談したら、そこに楓花がやってきて、橋本と一緒にフェードアウト。更に美月がフェードアウト。これからうちに帰って料理するらしい笑。葵がどんな料理作るのか聞いたら、健太がみんなで飲み会をした時の美月の料理の写真を出す。そこで美月は挨拶して帰った (美月も皆も雰囲気は明るい、美優などの一部を除いて)。料理の話題がでて、理央や葵は更に驚く。ついでに工藤も驚く。直人は、例のドイツ人は後期からは帰国しているようで、クリスマス近辺でまた来るということなので、次どこに行くかをやり取りしているようだ。美月が帰った後、美優が帰ると行ったとき、真帆も一緒についてきて美優と会話する。そして残った面々で雑談。これをもとにエピソードを作って。

A

フリースペースの空気は、少しずつ“いつもの放課後”に戻っていた。


「じゃ、そろそろ行くわ」

橋本が立ち上がる。


そのタイミングで、

「おまたせー」

と女性の声。


楓花だった。


  • 落ち着いた服装
  • 柔らかい雰囲気
  • 橋本と並ぶと空気が自然

「おー」

健太が手を振る。

「今日迎え?」


「近く来てたから」

楓花が笑う。


橋本は自然に荷物を持つ。

その動きに“付き合い慣れてる感”がある。


理央は少しだけそれを見る。


(……ちゃんと彼氏してる)


橋本って、

見た目だけならもっと軽く立ち回れそうなのに、

実際はかなり“身内型”。

そこが理央には少し意外だった。


「じゃ、また金曜」

橋本が言う。


「魚よろしくー!」

彩音が叫ぶ。


「タイじゃなくてもええからな」

健太が笑う。


「無茶言うな」

橋本も笑う。


楓花は軽く会釈して、

橋本と一緒にフェードアウトしていった。


その少し後。

美月も立ち上がる。


「私も帰る」


「早」

彩音が笑う。


「今日は何作るん?」


「まだ決めてない」


「えー」

葵が反応する。


「橘さん料理ほんまにするん?」


そこで健太が、

「見る?」

と言ってスマホを出した。


そこには、

過去の彩音宅飲みの写真。


  • 煮込みハンバーグ
  • タイの刺身
  • 盛り付け
  • スープ
  • 玉ねぎ料理
  • たこ焼き

普通の大学生宅飲みとは思えない。


「……え?」

葵が止まる。


「これ店やん」


工藤も普通に驚いていた。


「いや、クオリティ高くない?」


理央も写真を見つめる。


盛り付けも綺麗。

色味も良い。

しかも、

“映え狙いじゃなくて普通に美味そう”

なのが厄介だった。


「しかもこれ大体美月」

彩音が笑う。


「橋本の魚と合わさると意味わからんくなる」

健太も笑う。


「橋本がタイ捌いて、美月が料理して、真帆が盛る」

真帆が呆れ顔で言う。

「大学生の宅飲みちゃう」


「なんなんお前ら……」

葵が本気で言った。


美月は少し困った顔。


「別に普通だと思うけど」


「その“普通”が怖いねん」

彩音が即返す。


(笑)


「じゃ、お疲れさま」

美月は軽く頭を下げる。


「また金曜なー!」

健太が手を振る。


「うん」


そして。

美月は本当に普通に帰っていった。


  • ノーメイク
  • シンプル服
  • 地味
  • でも全国CMの人

理央と葵は、

その後ろ姿をしばらく見ていた。


(……なんなんだろ、あの人)


一方。

直人は別方向で盛り上がっていた。


「で、次クリスマス来るって」


「また来るん!?」

彩音が笑う。


「今度どこ案内するん?」

工藤が聞く。


「まだ決めてない」

直人はスマホを見ながら笑う。


「雪景色系か、温泉か、あとアニメ系」


「オタク全開やん」

健太が笑う。


「向こうもオタクだから成立してる」


そこへ。

小さな声。


「……私、帰るね」


美優だった。


空気が少し止まる。


「大丈夫か?」

健太が聞く。


「うん」


でも。

誰が見ても元気がなかった。


その時。

真帆が立ち上がる。


「私も行く」


「え?」

美優が少し驚く。


「駅まで」


真帆はそれ以上言わない。


二人は一緒に出ていった。


残された面々。

少し静かになる。


彩音がぽつり。


「……川崎、結構きてるよな」


「うん」

栞が静かに頷く。


理央は黙って聞いている。


直人がスマホをしまった。


「比較しすぎてる感じする」


「まあ」

健太が椅子にもたれる。


「最近イベント多すぎたしな」


  • CM
  • ドイツ人彼女
  • 成績
  • 旅行
  • 恋愛

全部一気に来ている。


工藤が少し考える。


「川崎さんって、多分真面目なんだろうね」


理央はその言葉に少し反応した。


“真面目”。


それは多分合っている。


でも。

理央は今日一日で分かってしまった。


このグループには、

“スペック”だけでは入れない。


そこにあるのは、

もっと別の“積み上げ”だった。

I「良いね。この後、美優と真帆の会話を書いて。美優は真帆にも感情を隠していた。真帆は美優に親身に会話。美優はこの道中でなくことはなかった。結局、真帆は美優の家 (一人暮らししている場所、広い、家族用の良い物件、親が美優のために1室を購入した不動産)まで心配でついてきて、内装を見て驚く。これをもとにエピソードを作って。

A

夕方。

大学を出てからしばらく。


美優はずっと、

「大丈夫」

しか言わなかった。


「ほんまに?」

真帆が横を歩く。


「うん」


「無理してへん?」


「してない」


でも。

声が薄い。


真帆は無理に踏み込まなかった。

それは彼女自身が、

“踏み込まれたくない時期”を知っているからだった。


駅へ向かう途中。

少し沈黙。


やがて真帆がぽつり。


「……比べすぎやで」


美優の肩が少しだけ揺れる。


「顔に出てる」


「……そんな分かりやすい?」


「今日は特に」


美優は少し笑った。

でも、

その笑顔は弱かった。


「だって……」


言葉が止まる。


「皆すごいから」


真帆は黙って聞く。


「美月ちゃんも」
「直人くんも」
「橋本くんも」
「理央さんも」


「みんな、“何かある”感じがして」


「私は……」


そこで止まる。


真帆は少しだけ視線を前に向けた。


「川崎はさ」


「“持ってる側”やと思うで」


美優は苦笑した。


「全然そんなことない」


「いや、ある」

真帆は即答した。


「語学できるやん」


「でもネイティブじゃないし」


「五か国語で日常会話できる時点でおかしいねん」


美優は返せない。


「あと」

真帆が続ける。


「川崎って、“嫌な人”じゃない」


美優が少し止まる。


「それ、結構強い」


夕方の風が吹く。


真帆は軽く笑った。


「世の中、あんまおらんで」


「能力あって」
「育ち良くて」
「でもちゃんと人に気使えるやつ」


「大体どっか歪む」


美優は少し俯く。


「……でも私、何も選ばれてない」


その瞬間だけ、

本音が漏れた。


真帆は歩く速度を少し落とす。


「CMのこと?」


美優は黙る。

それが答えだった。


「私、小さい頃アイドルなりたかった」


ぽつり。


「でも、怖くて」


「競争とか」
「比べられるのとか」
「向いてないって思って」


「だから勉強した」


「でも」


「美月ちゃん、普通にそこ行っちゃった」


そこで初めて。

美優の声が少し震えた。


「しかも本人全然気にしてなくて……」


「なんか」


「……かなわないなって」


真帆はしばらく何も言わなかった。


駅に着く。


「じゃ、ここで――」

美優が言いかけた時。


「いや、送る」


「え?」


「今日ちょっと危ない」


真帆の“危ない”は、

体調じゃなく、

精神のほうだった。


結局。

真帆は美優の家までついて行った。


マンション前。


「……え?」


真帆が止まる。


高級マンションだった。


  • セキュリティ
  • コンシェルジュ
  • エントランス
  • 照明

全部が違う。


「川崎……」


「親が」

美優が小さく言う。


「大学用に」


エレベーター。

高層階。


そして部屋。


真帆は中に入った瞬間、

言葉を失った。


広い。


  • リビング
  • ソファ
  • アイランドキッチン
  • 間接照明
  • 家具

全部、“良い”。


しかも、

一人暮らしの学生には明らかに過剰。


「……これ、家族住めるやん」


「買ったらしい」

美優が小さく笑う。


「私のために」


真帆は静かに部屋を見る。


ここで育ったら。

守られて当然だ。


でも同時に、


“期待も全部背負う”


空間だった。


美優はソファに座る。


「……なんかさ」


「皆、自分で立ってる感じする」


「私はずっと、用意された場所にいる感じ」


真帆は少し考える。


「川崎」


「うん」


「それ、多分逆やで」


「え?」


真帆は静かに言う。


「用意された場所におる人間って」
「意外と立てへん」


「そのまま沈むやつ、結構おる」


「でも川崎は」


「ちゃんと悩いてる」


「ちゃんと苦しんでる」


「それ、逃げてないってことやから」


美優は黙って聞いていた。


真帆は立ち上がる。


「今日は寝ろ」


「考えるの禁止」


「……うん」


真帆は玄関へ向かう。


その直前。


「真帆ちゃん」


「ん?」


「……ありがとう」


真帆は振り返らず、

軽く手を上げた。


「今度、美味いもん奢れ」


少しだけ、

美優が笑った。

I「良いね。美優らが帰宅している同時刻、葵は健太たちを飲み会に誘う。メンバーは、いつもの面々から彩音、栞、健太、直人、坂井が参加、新顔としては葵、理央、工藤 (成績上位層で、総合的な成績は栞、坂井より上)、理央側の男性2人 (林、宮脇、この二人はそんなに尖ってない協調型) が参加。この飲み会のエピソードを考えて。

A

夜。

場所は梅田近くの少し広めの居酒屋。

学生向けよりは少し落ち着いていて、
理央側の人間が選びそうな店だった。


参加者は、

いつもの側

  • 彩音
  • 健太
  • 直人
  • 坂井

新顔側

  • 七沢葵
  • 九条理央
  • 工藤
  • 宮脇

の10人。


最初は少し空気が分かれていた。


彩音は最初から通常運転。

「え、理央ちゃん酒強そう!」


「普通くらい」

理央は笑う。


「絶対強いって!」


一方。

栞は静か。

坂井も静か。

工藤は理央側に近い位置。

健太が間をつないでいる。


だが。

数十分で空気が変わり始める。


理由は健太だった。


「え、工藤って高校どこなん?」


そこから:

  • 受験
  • 高校時代
  • 体育祭
  • 推薦
  • 浪人ネタ

へ派生。


工藤は最初、
“成績上位の固い人”
っぽかったが、

意外と普通に笑うタイプだった。


「いや、俺化学オリンピック落ちたからな」


「十分怖いわ!」

彩音が笑う。


林と宮脇も、
思ったより柔らかい。


特に宮脇は、

「実は俺、橋本ちょっと怖いと思ってた」

と言い出して場が崩れた。


「なんで!?」

健太が爆笑。


「いや、顔がサッカー部エースやん」


「それ偏見すぎる」

栞が小さく笑う。


そこから、

“橋本実はめっちゃ身内型”

トークになる。


「楓花さん来た瞬間空気変わったもんな」

葵が言う。


「彼女最優先感すごかった」


「釣りも彼女連れてくしな」

健太が笑う。


理央は少し意外そうだった。


(……橋本ってもっと遊ぶタイプかと思ってた)


でも実際は逆。

かなり“固定相手を大事にする”側。


そこへ直人。


「橋本って実は保守派だから」


「お前に言われたくないやろ」

坂井が静かに刺す。


(笑)


その流れで、
今度は直人の話題。


「ドイツの子、マジで付き合ったん?」

林が聞く。


「うん」

直人は普通に答える。


「どうやって?」


「アニメ」


全員笑う。


「いやマジで」


そこから:

  • 京都案内
  • 聖地巡礼
  • 神社
  • 君の名は。
  • エヴァ
  • 温泉

の話。


葵がかなり食いつく。


「え、そんな恋愛あるんや……」


理央も少し興味を持っていた。


“大学の外”の広がりがある。

しかも直人は、
いわゆる陽キャタイプではない。


そこが少し新鮮だった。


その一方。

栞と工藤が、
いつの間にか勉強トークしていた。


「今回の実習、工藤くん早かったね」


「いや、田中さんのノートかなり綺麗だった」


「坂井くんも上手かった」


坂井は軽く笑う。


理央はそこを見ていた。


(……この三人、地味に強い)


しかも。

全員あまり前に出ない。


そこへ彩音。


「でもさー!」


「やっぱ今日の主役は美月やろ!」


「CM!」
「料理!」
「全S!」


「強すぎ!」


葵が酒を飲みながら言う。


「しかも男興味なさすぎる」


「誘い断る速度やばかった」

宮脇が笑う。


林も苦笑。

「俺ちょっと傷ついた」


(笑)


理央はグラスを回しながら聞いていた。


今日ずっと考えている。


橘美月。


あの人は、

“勝とうとしてない”


でも、

結果的に全部持っていく。


そこが怖い。


葵は逆に、
かなり美月に興味を持ち始めていた。


「でも逆に気になるよなー」


「なんであんななん?」


健太が笑う。


「昔からあんな感じ」


「欲が薄い」

栞が静かに言う。


「でもちゃんと人好き」


「だから人集まる」


その言葉に、
理央は少し反応した。


それは、
自分にはあまりないものだった。


飲み会後半。

空気はかなり混ざっていた。


  • 彩音は葵と盛り上がる
  • 健太は全方向と喋る
  • 工藤は栞・坂井と知的側
  • 林と宮脇は馴染む
  • 直人は海外ネタ

そして理央は、

少し離れた位置から、

このグループの空気を見ていた。


(……なんか)


(居心地いいな、ここ)


それを認めるのは、
少し悔しかった。

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