橘美月シリーズ大学編_#24「……今電話する?」「比較されない会話」とそれぞれの夜。“戦ってる空気”が薄いグループ

橘美月シリーズは女子会もので、美月さんが大学生 (アップしている段階で阪大・薬・4年) の設定なので、本編とは別に美月さんの友達を作り、大学側も絡められるようにしておきましょう。メイド服などのありそうな服はメインモデルたちはある程度着てしまったので、サブのモデルを追加する意図があります笑

前回:(……なんなんだろ、あの人)実習と、このグループの空気

I「橘美月×梅雨時。プロンプトはこちら

I「良いね。飲み会中、美優は家でふさぎ込んでいた。美優に隆と美月からメッセージが届く。隆とは次に会う約束 (デートとかそれらしいこと) をやる約束をしていたので、その関係に加えて美優が元気がないことを気遣う内容。美月からは、心配しての連絡だった。美優は隆に「つらい」と返し、隆も美優が比較して抱え込みやすいことを把握していたので、急遽デートではなく夜会うことになる。美優は比較して苦しんでいる話を勇気を振り絞ってしゃべる (もともとそういうことを自分から明かさず、隠すほうが多い)。隆は料理の世界の話をする。上を見ればきりがない世界、常に比較はされるし、この先もされ続ける。隆の所属しているお店は大衆系イタリアンなので、料理人としてはアイドルとかスターではないが、その中で地に足をつけて生き続けている隆 (やその周囲) の話を聞く。これをいれてエピソードを作って。

A

その頃。

美優は、一人だった。


高層マンションの部屋。

間接照明だけがついた静かなリビング。

ソファに座ったまま、
スマホを見ている。


通知。


グループLINE。


『橋本彼女と消えた笑』

『直人またドイツ語喋ってる』

『工藤意外とおもろかった』

『金曜また飲み会』


楽しそうだった。

皆。


そこへ。

別の通知。


『今日しんどそうだったな』

『大丈夫か?』


さらに。


美月

『無理しないでね』

『金曜、来れそうなら来て』


美優は画面を見つめる。


美月は悪くない。

むしろ優しい。

だから苦しい。


美優は少し迷ってから、

隆にだけ返した。


『……つらい』


送ったあと、
少し後悔する。


こんなこと、
今まであまり言わなかった。


でも。

数十秒後。

電話が鳴った。


「もしもし」

隆だった。


「今どこ」


「家……」


「行く」


「え?」


「デートとか今日やめ」


「今そういう感じじゃないやろ」


声はいつも通り。

でも少し真面目だった。


一時間後。

隆が来た。


黒Tシャツ。

仕事終わりらしく、
少し煙とオリーブ油の匂いがした。


「広」

部屋に入った瞬間、
隆が普通に言う。


「……引いた?」

美優が小さく笑う。


「いや」

隆はソファに座る。


「お嬢様なんやなって」


その言い方には、
嫌味がなかった。


少し沈黙。


隆は無理に聞かなかった。


だから逆に。

美優は少しずつ話し始めた。


「……私」


「比べちゃう」


「昔から」


「美月ちゃんとか」


そこで止まる。


「皆すごくて」


「CMも」
「勉強も」
「料理も」
「人も集まって」


「私、頑張ってるつもりなのに」


「全然届かない感じして」


「今日も」


「理央さんとか葵さんとか見て」


「なんか、自分だけ何もないみたいで」


声が少し震える。

でも泣いてはいない。


隆は静かに聞いていた。


しばらくして。

ぽつり。


「料理の世界も一緒やで」


美優が顔を上げる。


「上見たらキリない」


「俺なんか全然や」


「ミシュランの店とか」
「海外のスターシェフとか」
「SNSでバズるやつとか」


「上なんか無限におる」


「しかも比較される」


「客にも」
「上にも」
「後輩にも」


「“なんであの店より微妙なん?”とか普通に言われる」


美優は黙って聞いている。


「でもな」


隆は少し笑う。


「俺、別にスターちゃうねん」


「大衆イタリアンやし」


「雑誌載るわけでもないし」
「テレビ出るわけでもないし」


「でも」


「毎日店開けて」

「客来て」

「“うまかった”って言われて」


「それで生きてる」


声に変な強がりがなかった。


「俺の友達もそう」


「皆、地味やで」


「トラック乗ってるやつ」
「居酒屋回してるやつ」
「工場いるやつ」


「でもちゃんと生きてる」


「比較されながら」


「自分の場所で」


美優は少し俯く。


「……でも」


「美月ちゃんって、なんか別格で」


隆は少し考えた。


「多分あの子も苦労してるやろ」


「え?」


「なんとなく」


「楽して全部持ってるタイプには見えへん」


美優は少し止まる。


広島旅行の話を、
まだ詳しく知らない。

でも。

確かに。


美月の“落ち着き”は、
何かを通ってきた人間のそれにも見えた。


隆が続ける。


「あと」


「川崎、自分で自分殴りすぎ」


「え」


「今日の話聞いてたら」


「全部“自分が足りない”方向に変換してるやん」


図星だった。


美優は黙る。


隆は少し笑う。


「もっと雑でええねん」


「負けてても」
「遅れてても」
「比較されても」


「明日飯食って生きてたら勝ちや」


美優は小さく笑った。


「それ、隆くんっぽい」


「実際そうやし」


その空気が少しだけ、
美優を楽にした。


窓の外には、
大阪の夜景。


静かな部屋で。

美優は久しぶりに、

“比較されない会話”をしていた。

I「良いね。美優が隆と会っているころ、10人の飲み会は閉会に向かい、終わりごろに葵とか理央が最近美月に興味もってるみたいだから、今美月に電話かけよか?と彩音や健太あたりが悪乗りして提案し、理央や葵ものっかる (酒も入って、悪乗り)。いつもの面々から美月に電話をかけると、美月は電話に出て普通に雑談。どうやら風呂から上がった後で、もう少ししたら寝るつもりのようだ。理央とか葵からすると「寝るの早い」印象だが、いつもの面々は慣れているので平常運転だな、という印象笑。その後、飲み会が解散し、理央と葵が美月に「なんなんだろう」みたいな会話をする。そのエピソードを作って。

A

夜も更けてきたころ。

10人の飲み会は、
ゆるく終盤に入っていた。


  • グラスはかなり空いている
  • テーブルは少し散らかっている
  • 空気はだいぶ柔らかい

彩音は完全に出来上がっていた。


「いやーでも今日のMVP美月やろ」


「来てないのに?」

健太が笑う。


「存在感が強すぎるねん!」


葵も酒が回っていた。


「わかる」


「なんなんあの人」


理央は苦笑している。

でも否定しない。


そこで。

健太が悪い顔をした。


「……今電話する?」


「え?」

葵が食いつく。


「美月に」


彩音が爆笑。


「やろやろ!!」


「いや迷惑やろ」

坂井が静かに言う。


「でもあいつ多分普通に出るで」

健太が笑う。


「確かに」

直人も乗る。


理央と葵は、
完全に興味本位だった。


「え、見たい」

葵が笑う。


「どんな感じなん」


健太がスマホを取る。


コール。


数秒。


『……もしもし』


普通に出た。


「出た!」

彩音が爆笑する。


『何?』

美月の声は落ち着いている。


「今飲み会」


『楽しそう』


「お前来ればよかったやん!」


『明日一限あるし』


「真面目か!」


(笑)


健太が聞く。


「何してたん?」


『お風呂上がったとこ』


「早っ」

葵が思わず言う。


『もうちょっとしたら寝る』


理央が止まる。


(……え、もう寝るの?)


時刻はまだ23時前。

大学生としてはかなり早い。


でも。

いつものメンバーは誰も驚いていない。


「通常運転やな」

橋本不在だが健太が笑う。


「美月、老人説」

直人も笑う。


『健康的って言って』


「いやでもマジで生活リズム強いよな」

坂井が静かに言う。


『崩すとしんどいから』


「今何作ってたん?」

彩音が聞く。


『明日の分の下ごしらえ』


「えぇ……」

葵が本気で引く。


「人類?」


(笑)


理央も思わず笑っていた。


美月はそのまま普通に雑談する。


  • 金曜の飲み会
  • 橋本の魚
  • 直人のドイツ話
  • 彩音の実習事故

全部、
いつものテンション。


でも。

理央と葵は途中から、
不思議な感覚になっていた。


美月って、

“CMの人”

じゃない。


もっと生活に根付いた、
普通の大学生の延長にいる。


なのに。

時々異常に強い。


それが掴めない。


最後。


「じゃ、寝るね」


「おー」


「おやすみー!」


『おやすみ』


通話終了。


数秒静止。


そして。


「……なんなんあの人」

葵が真顔で言った。


全員笑う。


「それ皆思ってる」

健太が言う。


「なんか」
「芸能人感ないのに」
「普通に強い」


「しかもマジで恋愛興味なさそう」

宮脇が笑う。


「いや、あれは“今は”やと思うで」

彩音が言う。


「多分好きな相手できたらめっちゃ一直線」


「わかる」

栞不在だが、
その場の空気はなんとなく同意だった。


飲み会はそのまま解散。


駅へ向かう夜道。


理央と葵は並んで歩いていた。


少し涼しい風。

終電前の街。


葵がぽつり。


「……なんかさ」


「うん」


「最初、美月って」
『地味な真面目系』
やと思ってた」


「私も」

理央が静かに言う。


「でも違う」


「うん」


「なんか……」

葵は言葉を探す。


「“作ってない”んよな」


理央は少し考える。


「多分」


「自分の軸がある」


「え?」


「だから人に合わせてない」


「でも感じ悪くない」


「だから皆、自然に寄る」


理央は自分で言いながら、
少し悔しくなっていた。


自分は:

  • 努力して
  • 作って
  • 戦って

ここまで来た。


でも橘美月は、

“自然体”で人を集める。


そこが理解できない。


葵が小さく笑う。


「なんかムカつくくらい強いよな」


理央も少し笑った。


「……うん」


そして二人とも、
同じことを思っていた。


もっと知りたい。


橘美月という人間を。

I「良いね。翌日は木曜日、いつも通りの一日が始まる。美月はいつも通り早めに到着していて、今日は美優も早くからいて、軽く挨拶。彩音と葵は1限を遅刻して入ってくるも、彩音は出席には間に合い、葵は出席確認の場におらず欠席扱い笑。理央は美月を観察しているが、1限は特に驚くようなことはなかった(これといって発言をする機会があったわけではないので)。2限にかなり厳しめの授業をすることで学生の間では有名な数学系の授業があり、後半に抜き打ちのテストが実施されたが、美月は特に慌てる感じではなく、時間内に終わって早めに昼休憩に入っていた笑。なお、理央でも50/100点くらいの印象な難度で、成績上位層でも簡単ではなさそう。美月以外には、工藤などの成績トップ層や数学系トップ層も特に問題なく終えていたが、美優とか彩音あたりは、ほぼ0点となるような感じ、美優は白紙で名前だけ書いて提出となった。それを受けて、いつもの面々で雑談をしている。美月らのグループは、メンズは数学系は意外とできて、かなり難しかったけど半分くらいとれたかな、みたいな感じの反応。坂井はもっと高め、栞はやや苦戦するも半分は超えてそうな所感、女性陣は美優は白紙、彩音、真帆はわからないけどとりあえずなんか書いて出したようだ。美月は今回難しかったねと言っていたが、ちゃんと全部解答できたから早くあがったみたいな感じ(解答に自信ありそう)。そこに理央、葵が入ってくる。葵も白紙提出。美優、隆と会話して少し気持ちが回復したのに、落ち込む。理央は美月を更に強く意識する。これを入れてエピソードを作って。

A

木曜日。

後期が始まってまだ一週間も経っていないのに、
学生たちはすでに疲れ始めていた。


朝。

薬学部棟。


美月はいつも通り早かった。


  • 黒髪ポニーテール
  • ノーメイク
  • シンプルな白シャツ
  • 黒スカート

CMの人には見えない。


席について、
静かにノートを開いている。


そこへ。

「……おはよう」


美優だった。


少しだけ顔色は戻っている。

昨日よりはマシ。


「おはよう」

美月も普通に返す。


少し沈黙。


でも。

前日みたいな重さは少し薄かった。


隆と話したこと。

真帆の言葉。

それが少し残っている。


ただ。

まだ比較癖は消えていない。


その頃。


「やばいやばいやばい!!」


彩音が廊下を走っていた。

その後に葵。


「待って出席!」


「無理!」


二人とも完全に寝坊だった。


教室に飛び込む。


「セーフ!!」

彩音が着席。


だが。


「七沢さん、欠席ね」


「あ゛ーーーー!!」


(笑)


彩音は出席確認ギリギリ。

葵は数十秒遅かった。


「終わった……」

葵が机に突っ伏す。


理央は少し離れた席から、
その騒ぎを見ていた。


そして。

その視線は自然と美月へ向く。


だが。

1限中の美月は、
特に何もなかった。


発言もない。

目立つ動きもない。

普通にノートを取り、
普通に授業を受けている。


(……本当に普通)


理央は逆に混乱する。


あれだけ能力があるのに、
大学では本当に静か。


そして。

問題の2限。


学生の間で有名な、
数学系の鬼教員。


「はい、後半テストやります」


教室が凍る。


「聞いてない!!」

後ろで誰かが言う。


難易度は最悪だった。


  • 計算量
  • 発想
  • 時間
  • 応用

全部重い。


理央ですら途中で眉を寄せる。


(……難しい)


解けないわけではない。

でも。

時間が足りない。


工藤も珍しく真顔。


坂井は静かに解いている。


一方。

彩音。


「終わった」


真帆。


「何これ……」


美優。


途中で完全に止まった。


(無理)


頭が回らない。


昨日少し回復した気持ちが、
また崩れていく。


周囲は解いている。

自分だけ止まっている。


そして。

前のほう。


美月が普通に書いている。


迷いが少ない。


しばらくして。


「提出します」


早い。


教室がざわつく。


理央が思わず見る。


美月は本当に普通の顔だった。


焦りもない。


(……全部解けた?)


理央は少し動揺する。


しかも。

美月は提出後、
普通に荷物を持って出ていった。


昼休み。


いつもの面々が集まる。


「無理無理無理」

彩音が机に突っ伏す。


「今日のやつ人間向けじゃない」


真帆もぐったり。

「一応なんか書いたけど意味わからん」


健太が笑う。


「いや難しかったな」


「でも半分くらいは取れた気する」


橋本も頷く。

「時間足りんかった」


直人。

「数学っていうより暗号やった」


坂井は静か。


「多分七割前後」


「怖」

彩音が即反応。


栞は少し困った顔。


「後半で崩れた」

「でも半分は超えてると思う」


そこで。

全員の視線が美月へ。


「で?」

健太が聞く。


美月はお茶を飲む。


「今回難しかったね」


「いやそれはそう」


「でも一応全部解いた」


沈黙。


「……は?」

彩音が止まる。


「全部?」


「うん」


「時間足りたん?」


「ギリギリじゃない?」


「いやお前かなり早く出たやろ」


美月は少し考える。


「見直しはあんまりできてない」


つまり。


解答自体は全部埋めた。


健太が吹き出す。


「意味わからん」


そのタイミングで。

理央と葵が来た。


葵は席に座るなり、


「白紙提出!!!!」


と叫んだ。


(笑)


「名前しか書いてへん」


「私も近い」

彩音が手を上げる。


理央は座る。


「……あれ普通に難しかった」


その言葉に、
周囲が少しざわつく。


九条理央がそう言う。

つまり本当に難しい。


「工藤も苦戦してたし」


「え、工藤でも?」


「うん」


そこで。

健太が悪い顔をする。


「ちなみに美月全部解いた」


理央と葵が止まる。


「……え?」


「しかも早上がり」


理央は本気で美月を見る。


美月は普通にサンドイッチを食べていた。


ノーメイク。

シンプル。

普通。


なのに。


CM。

全S。

料理。

運動。

そして数学。


理央の中で、
橘美月という存在がさらに大きくなる。


一方。

美優は。


また少しだけ、
下を向いていた。


昨日、
少し楽になったはずだった。

でも。

また比較してしまう。


(私は白紙だったのに)


(美月ちゃんは全部解いてる)


その瞬間。

また心が沈みそうになる。


だが。

ふと。


『明日飯食って生きてたら勝ちや』


昨夜の隆の言葉が浮かぶ。


美優は少しだけ、
息を吐いた。


完全には立ち直れない。

でも。

昨日よりは、

少しだけ耐えられた。

I「良いね。翌日の昼休みにいつもの面々で今日 (金曜) 夜の彩音宅での飲み会の雑談。美月は前に出されたリクエストを元に何作るか考えてきたみたい。この時間は理央、葵は合コンに参加する予定。林と宮脇も別の合コンに参加するようだ。工藤は合コンは不参加。理央は気になって健太らに絡む (恋人いない人らは相手をみつけにいかないのか?的な。美月はともかく、他の面々はどうなの的な)。彩音や健太らを中心に楽しいからやっている、という話と、橋本や直人、真帆も相手いる (いた) けどこの会は出る (た)というコメントが返ってくる。美月は平常運転、理央は?が増える。これを踏まえて、エピソードをつくってみて。」

A

昼休み。

いつものフリースペース。


テーブルには、

  • サンドイッチ
  • コンビニ飯
  • 学食
  • ペットボトル

が並んでいる。


彩音はすでにテンションが高かった。


「で!!」


「明日何作るん!?」


美月はスマホを見ながら考えている。


「えっと」


「煮込み系って言われたから」


「ビーフシチュー系にするか」


「うぉーー!!」

健太が盛り上がる。


「あと魚あるならカルパッチョ系」


「橋本に伝えとく」


「あと玉ねぎ余るからオニオン系」


「待って店なん?」

葵がまた笑う。


「しかも酒に合う方向で組んでる」

坂井が静かに言う。


美月は普通に頷く。


「飲み会だから」


理央はその会話を聞いていた。


この人たち。

本当に“飲み会そのもの”を楽しみにしている。


そこへ。

葵がスマホを見る。


「あ、今日の合コンの店送られてきた」


「理央ちゃんたち今日やっけ」

彩音が聞く。


「うん」


「林と宮脇も別やけど今日らしい」


林が頷く。

「友達に呼ばれた」


宮脇も笑う。

「人数合わせ」


そこで。

理央がふと聞いた。


「逆にさ」


「健太たちって行かないの?」


「合コンとか」


健太が止まる。


「んー」


少し考える。


「別に嫌いじゃないけど」


「今は普通にこっちのが楽しい」


「え?」

理央は少し意外そう。


「だって毎週なんか起きるし」

彩音が笑う。


「確かに」

直人も頷く。


「美月CM出るし」


「橋本タイ捌くし」


「お前ドイツ人彼女できるし」

健太が返す。


(笑)


理央はまだ少し理解できない。


「でも恋人欲しいとかは?」


「まあタイミングじゃね?」

健太が軽く言う。


「橋本とか彼女いるけど普通に来るし」


「真帆も元彼いた時来てた」

彩音も言う。


「直人も今彼女いるけど来るやん」


「普通に楽しいから」

直人はあっさり。


理央は少し黙る。


彼女・彼氏ができたら、

別コミュニティへ移る。

あるいは、

恋愛優先になる。

理央の周囲ではそれが普通だった。


でもこのグループは違う。


恋愛があっても、

グループが壊れない。


しかも。

皆、無理に恋愛を探しに行っている感じでもない。


そこで。

理央の視線が美月へ向く。


「橘さんは本当に行かないんだ」


「行かない」

即答。


「なんで?」

葵が笑う。


美月は少し考える。


「今の生活で足りてるから」


理央が止まる。


“足りてる”。


その感覚が、
理央にはかなり遠かった。


理央は:

  • 勉強
  • 人間関係
  • 見た目
  • 恋愛
  • 将来

全部、
ある程度“取りに行くもの”
として生きてきた。


でも美月は違う。


何かを“埋めよう”としていない。


なのに。

周囲には人が集まる。


理央の中で、

「この人、本当に何なんだろう」

がまた増える。


その時。

健太が笑う。


「まあでも」


「美月が急に彼氏作ったら多分皆ざわつく」


「確かに」

彩音が爆笑。


「誰選ぶんやろ」


「想像できん」


「ていうか本人にその気配がなさすぎる」


皆笑う。


美月だけ、

本当に分かってなさそうだった。


「なんでそんな話になるの」


「そこや!!」

彩音が机を叩く。


(笑)


理央はその空気を見ていた。


このグループには、

恋愛マウントも、

スペック競争も、

ほとんどない。


でも。

だからといって、

皆弱いわけじゃない。


むしろ。

各々かなり強い。


なのに、

“戦ってる空気”が薄い。


理央は静かに思う。


(……居心地いいの、分かるかもしれない)

次回:「私目の前いるのに」「橘さん橘さん橘さん」芸能スカウトを断った美月:悔しがる理央:行動する美優

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