橘美月シリーズ大学編_#25「私目の前いるのに」「橘さん橘さん橘さん」芸能スカウトを断った美月:悔しがる理央:行動する美優

橘美月シリーズは女子会もので、美月さんが大学生 (アップしている段階で阪大・薬・4年) の設定なので、本編とは別に美月さんの友達を作り、大学側も絡められるようにしておきましょう。メイド服などのありそうな服はメインモデルたちはある程度着てしまったので、サブのモデルを追加する意図があります笑

前回:「……今電話する?」「比較されない会話」とそれぞれの夜。“戦ってる空気”が薄いグループ

I「橘美月×梅雨時。プロンプトはこちら

I「良いね。次はいつもの9人+葵 (合コンの人数調整でこちらに飛び入り) で金曜日の彩音宅の飲み会のエピソードを作って。予告の通り、美月はビーフシチュー、カルパッチョ系、オニオン系を含めた料理をつくる。例によってたこ焼きもあり。今回、橋本は栞の父からもらった良い日本酒を持ってきた笑。酒も入って話は盛り上がる。橋本と直人 (遠距離) の恋愛は順調。今回、後期になってから絡んでくるようになった、理央とか葵たちの話が話題に上がる。美月は相変わらずマイペース笑。美優はずっと元気ない。料理を食べて、美月の料理はやっぱりおいしく、CMの件、数学系のテストといろいろ最近の出来事が合わさった結果美月と比較してうつむき気味だが、隆との会話を思い出して少し持ち直す。美優は隆の話を聞かれて、思ったより良い人だし優しいと答えた。フリーの人たちの恋愛の話が話題に上がり、美月は相変わらず今は良いかなとマイペース笑。栞、彩音、真帆、健太、坂井あたりには動きはあるのか?理央とか葵のグループとの接点も増えたことだし、残りの面々はどうなる?これを踏まえてエピソードを作って。

A

金曜日、18時過ぎ。

彩音宅。


いつものように玄関が開きっぱなしになり、

「おじゃまー」

「また来た」

「週一で来てない?」

という声が飛び交う。


今回の参加者は10人。

  • 美月
  • 彩音
  • 真帆
  • 美優
  • 健太
  • 橋本
  • 坂井
  • 直人

理央は今回は別件 (合コン) で不参加。葵が飛び入りで参加。

工藤も来ていない。


キッチン。

今回も主役は美月だった。


大鍋の中には、

赤ワインとデミグラスを使ったビーフシチュー。


牛肉は柔らかく煮込まれ、

にんじんもじゃがいもも崩れていない。


彩音が蓋を開ける。


「やば」


「匂いだけで勝ち」


「閉めて」

美月が言う。


「温度下がる」


(笑)


テーブルには、

橋本が持ってきた魚で作ったカルパッチョ。


オリーブオイル。

レモン。

ハーブ。

玉ねぎ。


さらに。

オニオングラタンスープ。


そして、

たこ焼き機。


「大学生の宅飲みじゃねえ」

健太が毎回言う。


今回も同じだった。


そこへ。

橋本が紙袋を出す。


「酒ある」


「おお」


「栞父から」


全員が笑う。


「またか」


「今回ちょっと良いやつ」


ラベルを見る。


健太が固まる。


「待ってこれ高いやろ」


橋本が苦笑する。


「俺も詳しくないけど高そう」


栞が小さく言う。


「父、最近橋本くんに餌付けしてるから」


(笑)


宴会開始。


まずは料理。


ビーフシチューを一口。


沈黙。


そして。


「うま」


「うま」


「うま」


全方向から同じ感想。


直人が笑う。


「これ普通に店」


橋本も頷く。


「酒に合う」


美月は普通に食べている。


「良かった」


だけ。


彩音が呆れる。


「なんで作った本人が一番反応薄いん」


(笑)


その後。

話題は自然と最近のことになる。


CM。

数学テスト。

理央。

葵。

工藤。


「理央ちゃん、美月かなり気にしてるよな」

彩音が言う。


葵が笑う。


「めっちゃしてる」


「絶対してる」


「してない」

美月が即答。


「いや理央が」


「ああ」


それで終わる。


「興味なさすぎる」

健太が吹き出す。


一方。

美優は静かだった。


料理は美味しい。


皆も優しい。


でも。

まだ比較してしまう。


CM。

数学。

成績。


頭をよぎる。


しかし。

そこで思い出す。


『上見たらキリない』


『明日飯食って生きてたら勝ちや』


隆の声。


少しだけ。

気持ちが戻る。


彩音が聞く。


「そういや隆さんどうなん?」


全員の視線。


美優は少し照れる。


「……思ったより良い人」


「ほう」

健太が乗る。


「優しい」


「おお」


「あと」


少し考える。


「強い」


「強い?」

栞が聞く。


「私と違う意味で」


その言葉は、
かなり本音だった。


真帆は少し安心した顔をした。


美優が少し前を向いている。


それが分かったから。


そして。

酒も回ってきた頃。


恒例。

恋愛会議。


「で」

健太が言う。


「フリー勢どうなん」


「お前からやろ」

彩音が返す。


(笑)


健太は少し考える。


「今んとこ無し」


「でも理央ちゃん可愛くね?」

彩音が言う。


健太が苦笑。


「可愛いけど」


「なんか違う」


「何が」


「勝てる気せん」


全員爆笑。


坂井まで笑った。


「正直でよろしい」


次。


坂井。


「無し」


「即答」


「でもモテるやろ」

葵が言う。


「興味持たれることはある」


「うざ」

健太が言う。


(笑)


栞。


「田中さんは?」


栞は少し止まる。


「今はいない」


「気になる人も?」


「特には」


でも。

少しだけ視線が泳いだ。


彩音が見逃さない。


「怪しい」


「怪しくない」


真帆が笑う。


「居合道かもしれん」


(笑)


そして。

真帆。


以前なら話題を逸らしていた。


でも今は違う。


「しばらく恋愛休み」


その言葉に、

皆も無理に踏み込まない。


あの件は皆知っている。


最後。


「美月」


全員が向く。


「はい」


「どうなん」


「今は良いかな」


即答。


「理由は?」


「忙しいし」


「CM」


「終わった」


「勉強」


「普通」


「恋愛」


「今は別に」


健太が笑う。


「ブレへんなあ」


美月は本当にブレない。


その様子を見ながら、

葵は思った。


理央が美月を気にする理由が、
少し分かる。


勝とうとしてない。


でも。

結果的に目立つ。


人が集まる。


そして。

本人は全く変わらない。


宴会は深夜まで続いた。


笑い声。

たこ焼き。

日本酒。

恋愛話。


後期が始まってから増えた接点。


理央や葵のグループ。

工藤。

林。

宮脇。


人間関係は少しずつ広がっている。


ただ一つだけ確かなのは、


この夜もまた、

彩音宅の飲み会は

「恋人探しの場」ではなく、


皆が帰って来る場所


になっていたことだった。

I「良いね。彩音宅で飲み会が行われているころ、理央は合コンに行っていた。相手方には、社会人のハイスぺ男性 (大学生と恋愛でマッチングしても良いくらいの年齢層) が集まる。ここで運命の悪戯か、この飲み会に美月らがグループでやってた万博コスプレイベントで美月の歌と身体パフォーマンスを見て美月にスカウトをした芸能界の若手敏腕スカウト(大手事務所所属、若くして高給取り) が混じっていて、美月のテレビCMを見て、スカウトした子がCMに出ていて悔しい的な発言をするが、理央がその子 (美月) が同級生で、別に他社と契約しているわけじゃなく、芸能界に興味はなさそうで、学業を頑張っている、しかも1年前期全部Sという成績ということを伝えた (聞かれたので答えた)。このスカウトは理央を前に美月のことばかり話し、同席した女の子を「女性」としては見るが「芸能人の卵」とは見ていない感じ。理央は美月を意識する。どうなる?エピソードを考えて。

A

同じ金曜日の夜。

彩音宅では、

  • ビーフシチュー
  • カルパッチョ
  • 日本酒
  • たこ焼き

で盛り上がっていた頃。


梅田の少し高級なラウンジ風の店。


九条理央は、
別の飲み会に参加していた。


いわゆる、

ハイスペック社会人合コン


だった。


参加者は、

  • 大手商社
  • メガバンク
  • コンサル
  • 医療系
  • 広告代理店

など。


年齢は25〜30歳前後。


大学生から見れば、

かなり“大人”。


理央は元々こういう場に慣れていた。


  • 会話
  • 服装
  • 距離感

全部知っている。


そして当然、

今日も人気だった。


「九条さんって頭いいんだね」


「薬学部です」


「すごいな」


会話は途切れない。


でも。

理央自身は、
どこか退屈だった。


そんな中。

一人だけ異質な男がいた。


まだ30歳手前。


スーツは高そう。

時計も高そう。


ただ、

話し方が少し違う。


広告業界。

芸能業界。

そういう空気。


名前は瀬川。


大手芸能事務所所属。


若手ながら、

すでに有名タレントを何人も発掘している。


そして酒が入った頃。


瀬川が突然言った。


「いやー」


「悔しいんだよな最近」


周囲が笑う。


「失恋?」


「違う違う」


「スカウト」


そこから、

芸能界トークが始まる。


「めちゃくちゃ逸材いたんだよ」


「大学生?」


「そう」


「絶対来ると思った」


「なのに断られた」


理央は少し反応する。


瀬川が続ける。


「しかもその後」


「CM出てた」


「え?」


「テレビつけたら普通に出てた」


「マジかよ」


周囲が盛り上がる。


瀬川は本気で悔しそうだった。


「いや、うち入ってたらもっと伸ばせた」


「顔良い」


「声良い」


「運動できる」


「本番強い」


「人前平気」


「しかも変な癖ない」


理央の中で、

何かが引っかかる。


(まさか)


「その人って」


理央が聞く。


「橘美月さん?」


瀬川が止まる。


「え?」


「知ってるの?」


周囲がざわつく。


理央は少し驚く。


本当に美月だった。


「同級生です」


「マジで!?」


瀬川が身を乗り出す。


初めて。


理央本人ではなく。


美月に興味を持った。


それが理央には少し面白くなかった。


「今どうしてる?」


「大学です」


「事務所どこ?」


「契約してないと思います」


瀬川が固まる。


「え?」


「してないの?」


「多分」


「芸能界に興味ないです」


沈黙。


瀬川は頭を抱えた。


「なんでだよ……」


(笑)


理央は続ける。


「あと」


「前期全部Sです」


今度は瀬川が本気で止まる。


「は?」


「薬学部で?」


「はい」


「全部?」


「全部」


数秒沈黙。


そして。


「もったいねぇ……」


瀬川が呟いた。


それは本音だった。


芸能界の人間から見ても、

美月は特別だった。


そして理央は気付く。


この場にいる女性たち。


皆、

綺麗。


理央も。


十分に魅力的。


でも。


瀬川は、

女性としては見る。


しかし、

「才能」

としては見ていない。


その差が分かった。


彼が語る時だけ、

熱量が違う。


それは橘美月に対してだけだった。


理央はグラスを持つ。


少しだけ。

悔しかった。


自分はずっと努力してきた。


勉強。

容姿。

コミュニケーション。


全部。


でも。


美月は。


ノーメイクで。


飲み会では途中で帰って。


恋愛にも興味なくて。


芸能界も断って。


それでも、

こういう大人たちが

「惜しい」

「逸材だ」

と口を揃える。


瀬川はまだ話していた。


「あの子なぁ」


「絶対売れるのに」


「でも本人全く興味ないんだよ」


理央は苦笑する。


それだけは分かる。


本当に興味がないのだ。


その夜。

帰り道。


理央は駅へ向かいながら思う。


大学では、

美月は静かだ。


目立とうとしない。


でも。


外の世界では、

勝手に見つけられている。


CM。


スカウト。


成績。


人間関係。


理央は夜空を見上げる。


そして小さく呟いた。


「……なんなんだろうね、ほんと」


それは最近、

彼女が何度も繰り返している言葉だった。

I「一報そのころ美月たち。例によって、美月、栞、橋本は早めに帰った。残りの面々で雑談をしていると、葵に理央から電話があり、彩音宅に向かってもよいかと聞かれ、二次会してるからおいでと返ってきた。そこで、理央、林が合流 (宮脇は合コンで会話した女性と仲良くなって二次会に別途向かった)。理央と林は残り物として出された美月の料理が思ったよりずっとおいしくて驚いている。理央は芸能関係者の瀬川の話を愚痴る。自分たちがいても美月を見ていた、と。その話を聞いて、美優はまた一段落ち込んだが、この瀬川という人物が所属から考えて、美優の父と接点があることに気付く。美優の父は、地元で有名な資産家で、多くの不動産を所有していた。その中のテナント (大阪) に、瀬川の所属の芸能会社が入っていることを思い出した。美優は、この接点を使って自分が瀬川およびその芸能会社にコンタクトをとってみたい、と思った (隆の影響か、行動しようと思うようになっている)。お酒も入り、残った面々が飲み会を楽しむ。(理央はそれでもキャラを崩さないというか、固いというか、観察している)。美月に電話をかけたが、既に帰って寝ていたようで、電話にでなかった (翌朝ごめん寝てた、と、挨拶のメッセージがきた)笑。これをもとにエピソードを作って。

A

金曜日、22時過ぎ。


予想通り、

最初に帰ったのは美月だった。


「じゃ、お疲れ」


「早い!」

彩音が笑う。


「明日もあるし」


「土曜日やぞ!」


「だから?」


(笑)


美月は本当に変わらない。


その少し後。

栞も帰宅。


「父が朝早いから」


「田中家も健康的やな」

健太が笑う。


さらに橋本。


「楓花と電話する」


「はいはい」


「幸せ者」


橋本は苦笑しながら帰っていった。


結果。

残ったのは、

  • 彩音
  • 真帆
  • 美優
  • 健太
  • 坂井
  • 直人

二次会モード。


たこ焼き第二ラウンド。


日本酒第二ラウンド。


そこで。

葵のスマホが鳴る。


「理央や」


出る。


「もしもし?」


数秒後。


「え?」


「今から来る?」


全員笑う。


「おいでー」

彩音が即答。


「まだ飲んでるし」


30分後。


理央到着。


さらに。

林も一緒。


「お邪魔します」


「おー」


理央は部屋に入った瞬間、

テーブルを見る。


まだ残っている。


美月の料理。


「食べていい?」


「もちろん」


そして。


ビーフシチュー。


一口。


理央が止まる。


林も止まる。


「……え?」


「な?」

健太が笑う。


「思ったよりうまいやろ」


「いや」

理央が珍しく言葉に詰まる。


「思ったよりってレベルじゃない」


「店やん」

林も同意。


「だろ?」

彩音が得意げ。


なぜか彩音が誇らしい。


そして。

話題は自然と合コンになる。


「で?」

健太が聞く。


「どうやった?」


理央が日本酒を飲む。


少し考える。


そして。


「腹立った」


「え?」


「何が?」


そこで理央は、

瀬川の話を始める。


芸能事務所。


若手敏腕スカウト。


万博コスプレ。


CM。


そして。


「私たちいるのに」


「ずっと橘さんの話」


場が静かになる。


「そんなに?」

真帆が聞く。


「そんなに」


理央は苦笑する。


「同席してる女性じゃなくて」


「才能として見てるのは橘さんだけだった」


葵が笑う。


「分かる気がする」


「悔しいけど」


理央も頷く。


「悔しい」


「でも分かる」


その言葉は本音だった。


そこで。


美優が止まる。


また。

胸が沈む。


CM。


スカウト。


芸能界。


自分は選ばれなかった。


その感覚。


だが。

今回は少し違った。


ふと。

あることを思い出す。


(あれ……?)


瀬川。


その事務所。


父。


不動産。


頭の中で線が繋がる。


美優は少し顔を上げた。


「その会社って」


理央が会社名を言う。


間違いない。


美優の父が持つ大阪の商業ビル。


その中にテナントとして入っている。


しかも。

かなり昔から。


「知ってるの?」

健太が聞く。


美優は少し迷う。


「父の会社と接点あるかも」


「え?」


「テナント」


理央が少し驚く。


「そんなレベル?」


美優は曖昧に笑う。


正直。

自分でも驚いていた。


そして。


初めて。


比較ではなく。


行動


が頭に浮かぶ。


(話だけでも聞いてみようかな)


(自分はどう見えるんだろう)


それは。

隆と会ってから初めて出た発想だった。


一方。

酒は進む。


彩音。


「美月に電話しよ」


「また?」

真帆が笑う。


「理央もいるし」


「面白そう」


コール。


数回。


出ない。


「寝たな」

健太が即答。


「まだ11時やぞ」

理央が言う。


「寝る」


「寝る」


「寝る」


全員一致。


(笑)


翌朝。


グループLINE。


美月

『ごめん』

『寝てた』

『おはよう』


それだけ。


理央はスマホを見て、

思わず笑ってしまった。


昨夜。

芸能界の人間が、

「逸材」

「惜しい」

「売れる」

と騒いでいた人物。


その本人は、

22時台に帰宅して、

23時前には寝ていた。


理央は思う。


本当に。


橘美月という人間だけは、

理解すればするほど分からなくなる。


そして。


美優は静かにスマホを見つめていた。


瀬川。


芸能事務所。


父の人脈。


今までなら。


「私なんか」


で終わっていた。


でも今日は違う。


小さく。


本当に小さく。


「聞くだけ聞いてみようかな」


そう思えた。

I「良いね。美優は今回のエピソードを父に話し、芸能界、アイドルになりたかった話をして、瀬川の話を出して、接点を作れないかと頼み込む。すると、日曜日にその事務所の関係者と会うということで、美優は一部同席することになった (懇親会的な場のみ、商談などビジネスの話はだめ)。美月の話も父から伝わっており、瀬川もその飲み会に同席していた。美優は、思い切ってアイドルになりたいとの自分の想いを伝える。瀬川ら事務所関係者は少し考えた後、美優の熱意は認めたが、事務所の建物のオーナーの娘は傷つけられない (芸能界の大変なことなどがある) から自分たちには荷が重い的な感じでやんわり断られた笑。ただ、美優自体の可能性はある的な感じの反応をされた (本音なのか接待なのかはわからないが)。先日の合コンで理央ら、同席した人はどうなのかを聞いて、理央らでも可能性があるとは思うが、なんで美月に声をかけたのか、理央らではそう思わなかったのかを伝えられた。そしてCMの件は、瀬川らは本当に悔しがっている感じだった。可能性があるならあきらめてない感じだった。これを受けてエピソードを作って。美優はその後実家に帰り、父とどんな会話をする?その後部屋で一人になった後何を思う?エピソードを作って。

A

日曜日。

久しぶりに美優は実家へ戻っていた。


滋賀県内でも有数の高級住宅地。


川崎家。


大きな家だった。


ただ。

家族仲は良い。


父も母も、

美優を大切にしている。


昼食後。


父の書斎。


「本当に行くのか?」


父が聞く。


「うん」


美優は頷いた。


少し緊張している。


父はしばらく娘を見る。


「珍しいな」


「何が?」


「お前が自分から頼むの」


美優は少し黙る。


確かにそうだった。


今までは、

失敗しそうなことを避けてきた。


でも今回は違う。


「……知りたいから」


父は少しだけ笑った。


「分かった」


その日の夕方。


父の所有するビルの一角。


高級レストランの個室。


そこには、

不動産関係者。

広告関係者。

芸能関係者。


そして。


瀬川もいた。


「お久しぶりです」


美優は緊張しながら挨拶する。


瀬川は覚えていた。


「理央さんの同級生だよね」


「はい」


そこからは懇親会。


仕事の話はしない。


建前上。


ただ。

大人たちは察している。


美優が何を聞きたいのか。


食事が進み。


少し場が和んだ頃。


美優は勇気を出した。


「私」


全員が見る。


「小さい頃」


「アイドルになりたかったんです」


空気が少し静かになる。


「でも」


「怖くて」


「勉強の方に行って」


「最近」


「やっぱり少し気になっていて」


そこで止まる。


「私に可能性はありますか」


率直だった。


瀬川はしばらく考える。


周囲も黙る。


そして。


「正直に言うね」


「はい」


瀬川は苦笑した。


「うちでは預かれない」


美優は少し固まる。


だが。


瀬川は続ける。


「理由は能力じゃない」


「え?」


「君のお父さん」


「はい」


「建物オーナーでしょ」


(笑)


周囲も苦笑する。


「傷つけられないんだよ」


「……」


「芸能界って」


「正直きつい」


「病む子もいる」


「消える子もいる」


「潰れる子もいる」


「だから」


「責任取れない」


それは本音だった。


接待ではない。


本当に断っている。


だが。


「でも」


瀬川は続ける。


「可能性がゼロかって言われたら違う」


美優は顔を上げる。


「顔は良い」


「語学もある」


「頭も良い」


「キャラクターもある」


「需要はあると思う」


「ただ」


「覚悟が足りない」


美優は何も言えない。


図星だった。


そして。


理央の話になる。


「理央さんは?」


瀬川は考える。


「可能性ある」


「十分ある」


「じゃあなんで」


美優は聞いてしまう。


「なんで橘さんだったんですか」


瀬川が笑う。


「それ聞く?」


「はい」


瀬川は少し思い出す。


万博記念公園。


あの日。


「まず顔」


「はい」


「次に声」


「はい」


「次に身体能力」


「はい」


「最後に」


少し止まる。


「人前での強さ」


「……」


「目立つことを恐れてなかった」


「でも目立ちたがってもなかった」


「そこが珍しかった」


瀬川は少し悔しそうに笑う。


「しかも」


「本人全く興味ない」


(笑)


「CM見た時は本気で悔しかった」


「事務所入ってないのに」


「なんで先にテレビ出てるんだよって」


周囲も笑う。


でも。


その悔しさは本物だった。


「今でも諦めてない?」

美優が聞く。


「全然」


即答だった。


「大学卒業まで待つ」


「え」


「普通に待つ」


「それくらいの素材」


瀬川は本気だった。


その言葉を聞いて。


美優は少し複雑な気持ちになる。


悔しい。


でも。


不思議と前ほど苦しくない。


夕方。


実家。


父と二人。


リビング。


「どうだった」


父が聞く。


美優は少し考える。


「断られた」


父が笑う。


「そうか」


「でも」


「ちゃんと答えてくれた」


「うん」


「なんか」


「芸能界って思ったより怖そう」


父は静かに頷く。


「そうだろうな」


しばらく沈黙。


そして父が言う。


「お前」


「うん」


「今日は良かったと思うぞ」


「え?」


「初めて」


「欲しいものを取りに行った」


美優は黙る。


その言葉は、

妙に胸に残った。


夜。


自室。


ベッドの上。


スマホには、

グループLINE。


彩音。


健太。


真帆。


美月。


皆の日常。


そして。


瀬川の言葉。


『覚悟が足りない』


『可能性はある』


『まず行動しろ』

とは言われなかった。


でも。


今日。


自分は一歩動いた。


結果は断られた。


でも。


初めてだった。


「私なんか」


で終わらせなかったのは。


そして。


ふと。


橘美月のことを思い出す。


今までなら比較していた。


でも今日は少し違う。


(あの人はあの人)


(私は私)


完全にはできない。


まだ苦しい。


でも。


少しだけ。


本当に少しだけ。


前を向けそうな気がしていた。

I「良いね。ところで、理央らのグループに現在恋人はいる?理央、葵、林はどう?この辺の面々は、パートナーがいても付き合いで合コンとかに出る可能性はあると思う。場合によっては二股気味につきあって、乗り換えるとかもあるかも。なお宮脇は合コンで仲良くなった女性にアタックしているようだ (正式に付き合ったわけではなく、これから口説こうとしている段階)。ちなみに工藤は幼馴染の女性と交際している(ので合コンなどに入ってこなかったようだ)笑

A

かなり自然だと思う。

むしろ理央・葵側のグループは、美月たちのグループよりも恋愛に対するハードルが低く、流動性が高い印象がある。

美月グループは、

  • 友達関係が先
  • 恋愛は後
  • 恋人ができてもグループ維持

という感じ。

対して理央・葵側は、

  • 出会いの場に行く
  • 合コンも行く
  • 人脈も広げる
  • 良い相手がいれば交際

という価値観が強そう。

なので現時点だとこんな感じが自然。


九条 理央

現状:恋人なし

過去:あり


理央はモテる。

しかもかなり。


  • 成績優秀
  • 美人
  • 実家太い
  • 会話できる

なので高校時代から告白経験多数。


ただし。

理央は恋愛にも「基準」が高い。


「好きになった」

だけでは付き合わない。


  • 将来性
  • 学歴
  • 仕事
  • 人間性

も見る。


だから交際経験はあるが長く続いていない。


むしろ、

「もっと良い人いるかも」

で別れた経験がありそう。


合コン参加も普通。


ただし。

遊びたいというより、


「選択肢を増やしたい」


タイプ。


だから今はフリー。


美月への興味も、

恋愛ではなく


「なんでこの人こうなんだろう」


という競争心寄り。


七沢 葵

現状:恋人なし

過去:複数あり


葵はかなり恋愛寄り。


高校時代から普通に彼氏がいた。


大学でも何人か付き合った経験がある。


ただし。

長続きしない。


理由はシンプル。


飽きる。


刺激が欲しい。


楽しいことが好き。


なので。

付き合っていても、


「合コン誘われた」

「行く」


くらいは普通にあり得る。


もちろん浮気するつもりではない。


でも距離感は軽い。


そのせいで別れた経験もありそう。


彩音と相性が良い理由もここ。


ノリが近い。


現状:微妙


一番面白い立ち位置。


実は地元に彼女がいる可能性が高い。


ただし遠距離。


しかも関係が惰性。


だから本人も、


「付き合ってるけどどうなんだろう」


状態。


なので合コンも来る。


本人の中では、


「別れるかもしれないし」


くらいの理屈。


美月グループからすると、

少し理解しにくいタイプ。


橋本とかは、


「彼女いるなら行かんやろ」


と思う側。


宮脇

現状:フリー


今回の合コンでアタック開始。


かなり素直。


気になったら行く。


だから今回も、


「二次会行ってきます」


になった。


成功率はそこそこ高そう。


工藤

現状:幼馴染と交際中


かなり安定。


むしろ橋本に近い。


恋愛観も保守的。


だから合コン不参加。


「行く意味なくない?」

と思っている。


理央グループの中では珍しいタイプ。


面白いポイント

実は、


工藤
橋本
直人


は恋愛観が近い。


  • 一人と付き合う
  • 長く続ける
  • コミュニティを大事にする

逆に


理央


は、


  • 出会いを広げる
  • 比較する
  • 選択肢を持つ

側。


なので今後、

理央や葵が美月グループと接点を増やすと、


「恋愛の考え方」


の違いが結構話題になりそう。

特に理央は、

「もっと良い相手がいるかもしれないから探す」

が自然な価値観なのに、

美月が

「今の生活で足りてる」

と言うので、

そこが理解できずに興味を持ち続ける展開はかなりありそう。

I「良いね。この土日、理央は先日の飲み会での瀬川の件がかなり悔しかったようだ。日曜日に葵らグループの女性との女子会に参加するが、まだ愚痴を言っていた (理央自身容姿が整っていてモテる側の自覚があったので、スルーされたのはかなり悔しかったようだ)笑。なお、葵は当初理央らの合コンに参加する予定だったが、男性側の数が減ったため、急遽変更して彩音宅の飲み会に変更した結果、美月の料理を出来立ての時に食べていた笑。ある意味潜入的な感じで、美月のエピソードを彩音らグループの面々から聞いて、ネタとして消費していたようだ笑。これを受けて、この女子会のエピソードを作って。参加者は、理央、葵、千佳、真奈美、愛里 (理央と葵は薬学部、それ以外は別の学部) のグループ。

A

日曜日の午後。

場所は梅田の少しおしゃれなカフェ。


参加者は5人。

  • 九条理央
  • 七沢葵
  • 西園寺千佳(経済)
  • 小宮真奈美(法)
  • 水原愛里(外国語)

理央と葵以外は薬学部ではない。


ただ、

高校時代の友人や大学で知り合った仲良しグループで、

月に1回くらい集まっている。


席につくなり。


「で?」


愛里が笑う。


「その話まだ引きずってるの?」


理央。


「引きずってる」


即答。


全員爆笑。


「そんなに?」


「そんなに」


理央はアイスコーヒーを飲む。


「だって」


「私いるのに」


「ずっと橘さん」


また全員笑う。


真奈美が肩を震わせる。


「それは悔しい」


「でしょ!?」


「いやでも」

千佳が言う。


「芸能人のスカウトなんでしょ?」


「そう」


「仕事じゃん」


理央は止まる。


それはそう。


でも。


「それでも悔しい」


(笑)


愛里が笑う。


「理央って意外と負けず嫌いよね」


「意外じゃない」

葵が即答。


「めちゃくちゃ負けず嫌い」


「知ってる」


(笑)


そこから。


話題は自然に、

橘美月へ。


「で」

千佳が聞く。


「その橘さんってどんな人なの?」


理央が答えようとした瞬間。


「変な人」


葵が即答した。


「変な人」


全員笑う。


「どう変なの」


葵が昨日の話を始める。


彩音宅。


飲み会。


美月の料理。


CM。


数学。


飲み会での様子。


そして。


「22時くらいに帰った」


「早」


「で、23時には寝てた」


「大学生?」


「それな」


(笑)


さらに。


「料理めちゃくちゃ上手い」


「勉強できる」


「運動できる」


「CM出てる」


「恋愛興味なし」


「ノーメイク」


「アクセサリーなし」


「合コン拒否」


愛里が吹き出す。


「設定盛りすぎでしょ」


「盛ってない」

理央が真顔。


「全部本当」


「怖」


「怖い」


そこから。


葵が昨日の飲み会で聞いた話を、

ほぼネタとして披露する。


  • 飲み会途中で帰る
  • 家で料理
  • 毎日風呂
  • 朝型
  • 家庭教師
  • CM断る気だった
  • 芸能スカウト断った

女子たち。


「何それ」


「修行僧?」


「仙人?」


(笑)


そして。


愛里が聞く。


「でも可愛いんでしょ?」


理央と葵が同時に止まる。


「……」


「……」


「可愛い」


「可愛い」


即答。


そこは否定できない。


「じゃあモテるじゃん」


「モテると思う」


「でも本人が全く乗らない」


「もったいな」


「瀬川もそう言ってた」

理央が言う。


そこから。


再び瀬川の話。


理央はまた愚痴る。


「ほんと腹立つ」


「橘さん橘さん橘さん」


「私目の前いるのに」


愛里が笑う。


「珍しいじゃん」


「理央がそんなこと言うの」


理央は少し黙る。


確かにそうだった。


今まで。


勉強。


容姿。


コミュニケーション。


大抵の場面では、

自分が中心に近かった。


でも。


橘美月は違う。


本人が何もしてないのに、

周囲が勝手に注目する。


そこが納得できない。


千佳がぽつり。


「それ」


「理央、橘さん好きなんじゃない?」


「は?」


理央が止まる。


全員笑う。


「恋愛じゃなくても」


「気になりすぎでしょ」


「確かに」


「最近ずっと橘さんの話してる」


理央は反論しようとする。


でも。


できない。


実際、

最近ずっと考えている。


橘美月。


あの人は何なんだろう。


一方。


葵は別のことを考えていた。


昨日。


美月の料理を食べた。


皆の話を聞いた。


そして。


何となく分かった。


彩音たちのグループが、

なぜ楽しそうなのか。


あそこは、

恋愛も、

成績も、

スペックも、

全部話題にはなる。


でも。


競争にならない。


そこが珍しい。


帰り道。


葵が理央に言う。


「なあ」


「ん?」


「私ちょっとあっち好きかも」


理央が笑う。


「彩音たち?」


「うん」


「なんか楽」


理央も少し考える。


そして。


「……分かる」


認めるのは少し悔しい。


でも。


九条理央自身も、

少しずつ彩音たちのグループに興味を持ち始めていた。

次回:

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