橘美月シリーズ大学編_#30「あのボーカル、本当に学生?」学園祭予選会 ― サ界の余韻。

橘美月シリーズは女子会もので、美月さんが大学生 (アップしている段階で阪大・薬・4年) の設定なので、本編とは別に美月さんの友達を作り、大学側も絡められるようにしておきましょう。メイド服などのありそうな服はメインモデルたちはある程度着てしまったので、サブのモデルを追加する意図があります笑

前回:「土曜日、大渋滞」金曜日・夕方 美優の部屋 ― 壮行会

I「橘美月×イワシ。

I「良いね。そして土曜を迎える。まずは健太らは美月のモーニングコールで起床笑。昨日の残りを朝ご飯に食べて、準備して出発、美優はデート、彩音、真帆、健太は音楽のほうへ。

予選の会場は学生がたくさんいて盛り上がっている。なお、会場にはなにやら一般人ではない人たちの姿も。瀬川の所属する芸能事務所は、大手の芸能事務所で、関東に本社を構える数社には及ばないものの、アイドル、モデル、音楽系など総合的に強い芸能事務所で、関西では最大手だった。スカウトの瀬川とスカウト部門の役員クラス、さらに社長と、そこに所属するベテラン歌手の一団でやってきた (このベテラン歌手や社長のように知名度がある人は、目立たないような恰好できている、大学の学園祭にくるようなメンツではない笑)。

ここで美月ら、サ界のパフォーマンスになる。理央、葵、林、宮脇もきている。実行委員会の千佳もいる。なお、工藤は幼馴染の恋人と地元でデートしているので不在なようだ笑。一声目で会場が沸く。美月の歌唱力は、教師らのトレーニングの賜物で歌手なみ、瀬川たちがみても今すぐデビューさせて良いくらい、声量、声質、技術ともに素人のそれではなくプロみたい笑。美月は歌は好きではある (没頭するような好きというより趣味としての好き)。今回は、この予選の出来でみなが本番にでれるか決まるということで、みんなのために美月は練習して、コンディションも整え、つくりこんできた。今回は本気で歌う。瀬川がコスプレ回で効いた時の歌のクオリティとはギアが二段階以上上、という状態 (この時は美月はじつは控えめ抑えていたらしい笑)。

実行委員会はざわざわし、ミスコンかこっちかで内内でいろんな意見があったようだが、これは音楽の方に出てもらおう、ということになった笑。理央はうそでしょ、という感じで驚いて棒立ち。流石にここまで歌えるのは想定外笑。葵とかは会場と一緒に盛り上がっている笑。対して瀬川たちもざわざわしている笑。瀬川でも想定の上をいかれ、川が無理やりひっぱりこんできた上の二人もこれは来た意味があるというか瀬川がそれだけ言うものがある、という意見で顔を見合わせる。ベテラン歌手も素直に美月を褒めていた。学生の歌ではない、といっている。なお間奏で橋本が乱入し、ドリブルやボールをつかったパフォーマンス。ここで橋本がアドリブで美月にパスを出すと、美月がボールもって、アドリブでパフォーマンスしている真帆、彩音、健太の間をサッカーのドリブルで抜いて橋本にパス。橋本がふざけて美月にジャンプしてみたいなジェスチャーだして浮き球をほおると、美月が走って追いついて、オーバーヘッドシュートを打って橋本へ (動きがキレキレ笑)、橋本は胸トラップで受ける、というアドリブを披露笑。理央、更にあんぐり。瀬川たちもあんぐり笑。会場は盛り上がる。その後、美月、普通に歌う笑。坂井のギターもちゃんとしているので、形になっている。持ち曲を全て披露した後、予選通過、ということがその場で発表され、みんなでステージ上で喜ぶ笑。ここまでをエピソードにしてみて。

A

土曜日・朝

美優の部屋

朝七時。

静かな部屋にスマートフォンの着信音が鳴る。

健太が寝ぼけながら手を伸ばした。

「……もしもし。」

電話の向こう。

「おはよう。」

美月だった。

「あ、おはよう。」

「起きてる?」

「今起きた。」

「朝ご飯食べてね。」

「了解。」

「じゃあまた後で。」

いつも通り、短いモーニングコール。

電話が切れる。


健太が笑う。

「毎朝正確やな。」

彩音が布団から顔だけ出す。

「美月らしい。」

真帆も眼鏡を掛けながら笑う。

「生活リズムが強い。」

美優も起きていた。

昨日より表情は柔らかい。


朝食は昨日美月が作り置きしてくれたもの。

スープ。

サラダ。

ローストビーフサンド。

軽く温め直したエビフライ。

彩音が感心する。

「朝でも普通に美味しい。」

健太。

「昨日より味しみてる。」

美優も静かに食べる。

今日は土曜日。

デートの日だった。


「緊張する?」

真帆が聞く。

美優は少し考え、

「……少し。」

とだけ答えた。

彩音が笑う。

「楽しんでき。」

「うん。」

美優は静かに頷いた。


しばらくして、

四人はマンション前で別れる。

「行ってきます。」

美優は隆との待ち合わせへ。

健太たちは大学へ向かった。


大学

今日は学園祭企画の公開予選。

朝から学生が多い。

音楽企画ということもあり、

会場はかなり賑わっていた。


「結構人おるな。」

健太が辺りを見回す。

坂井はギターケースを抱えている。

直人はカホン。

栞はキーボード。

彩音と真帆も少し緊張している。

橋本だけはフットサルユニフォーム姿だった。

「お前だけ場違いや。」

健太が笑う。

「俺は乱入係。」

橋本は真顔で答えた。

(笑)


一方。

客席。

理央。

葵。

林。

宮脇。

そして実行委員の千佳。

「結構人多いね。」

葵が辺りを見る。

理央は腕を組んだまま。

「どんな歌か。」

「見せてもらう。」

完全に偵察だった。


さらに別の場所

一般客に紛れて、

数人の大人が入ってきた。

黒い帽子。

眼鏡。

マスク。

かなり目立たない服装。

しかし。

瀬川だけはその顔ぶれを見て少し緊張していた。

隣には、

スカウト部門役員。

さらに。

芸能事務所社長。

そして。

所属するベテラン女性歌手。

社長が苦笑する。

「瀬川。」

「大学の学園祭に社長連れて来たの初めてじゃないか?」

瀬川。

「……すみません。」

「でも。」

「絶対見てほしかったんです。」

ベテラン歌手が笑う。

「そこまで言うなら期待するわ。」


「次、サ界です」

司会の声が響く。

「続いては!」

「サ界!」

拍手。

七人がステージへ上がる。

坂井。

美月。

栞。

直人。

彩音。

真帆。

健太。

そして袖には橋本。


坂井がギターを構える。

直人がリズムを刻む。

栞がイントロを入れる。

静かに。

美月がマイクを握る。


一声。


「──」


その瞬間だった。

会場全体が静まり返る。

そして。

ざわっ。

という空気が広がる。


「え?」

「……。」

「今の。」

「学生?」


理央も目を見開く。

(……。)

(嘘。)


美月の歌は。

万博の時とは別物だった。


声量。

声質。

音程。

表現。

息遣い。

抑揚。

どれを取っても、

完全にプロの歌だった。


瀬川。

「……。」


「違う。」


「さらに上だ。」


社長も腕を組む。

「これは。」

「学生じゃない。」

役員。

「完成してる。」

ベテラン歌手は静かに笑う。

「歌手やん。」

「デビューできる。」

「今でも。」


瀬川は思わず笑ってしまう。

「だから。」

「言ったでしょう。」

「もっと凄いって。」


理央

完全に固まっていた。

(歌。)

(ここまで。)

(……。)

(勝てない。)

そんな言葉すら浮かばない。

ただ。

呆然と見ていた。


対して。

葵。

「すごっ!!」

普通に盛り上がっていた。

客席で手拍子。

「めっちゃ上手いやん!」


間奏

健太が叫ぶ。

「橋本!」

「いけーー!」

橋本がフットサルユニフォームで乱入。

リフティング。

ボールコントロール。

歓声。


そして。

橋本が突然、

美月へボールをパス。

予定にはない。

完全アドリブ。


美月。

「え?」

一瞬笑う。

そのまま。

足元でボールを止める。

彩音。

真帆。

健太。

三人の間を、

軽やかなドリブルで抜ける。

会場。

「おぉ!」

橋本が笑いながら、

空へ浮き球を上げる。

そして。

「跳べ!」

というジェスチャー。


美月。

一瞬だけ笑った。

助走。

加速。

ジャンプ。

身体が空中で反転する。


オーバーヘッド。


ボールは綺麗な弧を描き、

橋本の胸元へ。

橋本。

胸トラップ。

ピタッ。

そのまま観客へ向かってガッツポーズ。


「うおおおお!!」


会場は大歓声だった。


理央。

「……。」

完全に口が開いていた。


瀬川。

「……。」

社長。

「……。」

役員。

「……。」

ベテラン歌手。

「何あの子(笑)」

瀬川は頭を抱えた。

「だから。」

「説明できないんです。」


ラスト

何事もなかったように、

美月は歌へ戻る。

坂井も落ち着いてギターを弾き続ける。

直人もリズムを崩さない。

栞も最後まで支え切る。

真帆。

彩音。

コーラスも安定していた。

健太のMCも自然だった。

七人全員で作るステージ。

そして最後。

演奏終了。


大きな拍手。

歓声。

スタンディングオベーションまで起こる。


実行委員同士が顔を見合わせる。

「もう。」

「決まりやろ。」

「これは。」

「本番。」

「出てもらおう。」


司会がその場でマイクを持つ。

「審査の結果!」

「サ界!」

「予選通過です!!」


「やったぁ!!」

彩音が飛び跳ねる。

健太も拳を上げる。

直人が坂井とハイタッチ。

栞はほっと息をつく。

橋本はボールを抱えて笑う。

そして。

美月も少し照れたように笑いながら、

皆と一緒に喜んでいた。


客席では。

理央がまだ立ち尽くしていた。

彼女が見に来たのは「偵察」のつもりだった。

しかし目の前にいたのは、

成績優秀な薬学部生でも、

CMに出た一般学生でもなかった。

**本気でステージに立てば、プロと遜色ない歌を披露する"橘美月"**という存在だった。

一方、客席後方では瀬川が静かに社長へ向き直る。

「社長。」

「今なら。」

「私がここまで言った理由、分かっていただけましたか。」

社長はゆっくり頷いた。

「……分かった。」

「今日来た価値は十分あった。」

「この子は、本物だ。」

I「良いね。この続きで、ステージがら降りてくる美月。サ界は、衣装は美月の普段着に合わせていた笑 (異性にもてる気がなさそうなシンプルな服で色をそろえている、これが会わせやすいし安いしこれはこれで良い、ということになっていた笑)。美月はこのステージでもいつも通りノーメイク、アクセサリーなし笑。その状態で理央の前を横切る。美月は楽しそうに、一緒にステージに上がった面々と会話している。理央の目の前をまるで理央に気付いていないかのように通り過ぎ、理央は唇をかみしめる。

ここで理央は後ろからペットボトルでつつかれる笑。その相手は水澤蒼真、法学部2年のイケメンで、前期に理央と交際していた男性で、前年のミスコン男版だった人。理央は3か月で振られたようだ (別の女に気がいったらしい)笑。らしくないぞ、とからかわれる。理央はうるさい、と答えて鞄でかるく蒼真をはたき、悔しそう。ミスコン、楽しみにしていると蒼真が理央に伝え、理央のもとを離れる。そして美月に蒼真が話しかけるが、そっけない対応笑。蒼真、美月を口説こうとしたができず笑。

その時、美月が瀬川らに声をかけられる。蒼真や理央はメンツに驚く、大学祭の予選にくるような面々ではないし、蒼真や理央はこの面々をしっていた笑。今回は前日に断られた後なので、スカウト色は強くないが、興味をもったこと、できれば今すぐにでも来てほしい、的な感じで声をかけられる。なお、美月はベテラン歌手からもスカウトされたが、断っていた (今は学業だそうだ)笑。理央らは更に唖然笑。瀬川らは、引き続き応援している、という感じのスタンスで帰る。、蒼真、理央は唖然としているが、この二人はスカウトされず、声をかけられず、この二人に芸能関係者の一行らは目を向けることもせず会場を後にした。蒼真や理央は再び美月を意識する。これを踏まえて続きのエピソードを作って。

A

土曜日・午前

学園祭音楽企画予選終了後

「サ界、予選通過です!」

拍手と歓声の中、七人は深く一礼した。

ステージ袖へ戻ると、皆ほっと息をつく。


「終わったぁ!」

彩音が両手を上げる。

「緊張した!」

真帆も笑う。

「でも楽しかった。」

直人はカホンを抱えたまま座り込む。

「足震えた……。」

坂井はギターケースへしまいながら、美月を見る。

「ありがとう。」

「歌、最高だった。」

美月は少し照れくさそうに笑った。

「みんなのおかげ。」

健太がすぐ突っ込む。

「いや。」

「今回は美月のおかげ七割。」

「坂井二割。」

「残り一割俺。」

「なんでやねん。」

全員が笑った。


衣装

学生たちからも声が聞こえる。

「あれ?」

「衣装普通じゃない?」

「私服?」

「なんか統一感ある。」

実際には、

坂井が最初に提案していた。

「お金かけるより。」

「美月の普段着に合わせよう。」

その結果。

全員、

白・ベージュ・ネイビーを基調としたシンプルな服装。

高価な衣装でも、

アイドル風でもない。

大学生らしい自然な雰囲気だった。

そして。

美月だけはいつも通り。

ノーメイク。

アクセサリーなし。

髪もいつもの高いポニーテール。

さっきまでプロ顔負けの歌を歌っていた人物とは思えないほど、普段のままだった。


理央

理央はまだ客席で立ち尽くしていた。

(……。)

(何だったの。)

(あの歌。)

(あの身体能力。)

(何で。)

(あんな普通の顔して歩いてるの。)

そんなことを考えていると。

美月たちが笑いながら前を通る。

「橋本。」

「最後のパス面白かった。」

「完全アドリブ。」

橋本が笑う。

「オーバーヘッドやるとは思わんかった。」

健太。

「客席めっちゃ湧いてた。」

彩音。

「またやりたい!」

皆、本当に楽しそうだった。

そして。

美月は理央のすぐ横を通る。

しかし。

理央の方を見ることもない。

本当に、

そこに理央がいることすら気付いていないようだった。

理央は唇を強く噛みしめる。

(……。)

(見なさいよ。)

(私を。)

その時だった。


コツ。


後ろから肩をペットボトルで軽くつつかれた。

「らしくないぞ。」

聞き覚えのある声。

理央が振り返る。

「……蒼真。」


水澤蒼真

法学部二年。

前年のミスターコンテスト優勝者。

長身。

爽やかな笑顔。

誰が見てもイケメン。

そして。

理央の元恋人だった。

交際期間。

約三か月。

理由は単純。

蒼真が別の女性を好きになり、別れを切り出した。


蒼真は笑う。

「そんな顔。」

「初めて見た。」

理央はむっとする。

「うるさい。」

鞄で軽く叩く。

「痛い痛い。」

蒼真は笑う。

「でも。」

「ミスコン。」

「楽しみにしてる。」

「……。」

「頑張れ。」

それだけ言って、

蒼真は手を振りながら歩いていく。


今度は美月へ

蒼真はそのまま、

美月たちへ近付いた。

「こんにちは。」

美月が振り向く。

「こんにちは。」

「歌すごかった。」

「ありがとう。」

「今度お茶でも――」

「ごめんなさい。」

「予定あるので。」

「……。」

即答だった。

蒼真は一瞬止まり、

苦笑する。

「早いな(笑)」

「すみません。」

「では。」

それだけ。

会話終了。

健太が横で笑いをこらえていた。

(早っ。)

蒼真も肩をすくめて笑うしかなかった。

「参った。」

そう言って離れていく。


さらに

その直後。

瀬川たちが近付いてきた。

理央も。

蒼真も。

「あれ?」

と思う。

(……。)

(あの人。)

(テレビで見たことある。)

社長。

役員。

瀬川。

そして。

ベテラン歌手。

普通なら大学祭に来る面々ではない。


瀬川が笑う。

「橘さん。」

「今日も素晴らしかった。」

「ありがとうございます。」

社長も穏やかに話す。

「本当に良い歌でした。」

「ありがとうございます。」

ベテラン歌手が笑う。

「あなた。」

「今すぐデビューできる。」

「私の事務所来ない?」

美月は少し困ったように笑う。

「ありがとうございます。」

「でも。」

「今は薬学を頑張りたいので。」

「学業優先です。」

ベテラン歌手は大笑いした。

「はっはっは!」

「こんな断られ方初めて(笑)」

社長も苦笑する。

「瀬川。」

「苦労してるな。」

瀬川も笑う。

「はい。」

「毎回です。」


社長は最後に言う。

「無理には誘いません。」

「でも。」

「応援しています。」

「いつでも待っています。」

「ありがとうございます。」

美月は深く頭を下げた。


一行はそのまま会場を後にする。


その間。

理央も。

蒼真も。

ただ見ていた。

誰も。

自分たちには話しかけない。

目も向けない。

芸能関係者たちの視線は、

終始、

美月だけに向いていた。


蒼真がぽつりと呟く。

「……何者?」

理央は返事をしない。

ただ。

美月の後ろ姿を見つめていた。

(勉強。)

(歌。)

(運動。)

(CM。)

(料理。)

(芸能事務所。)

そこまで積み重なってもなお、

本人はいつも通りノーメイクで、アクセサリーも付けず、大学生活を楽しんでいる。

その姿が、理央にはますます理解できなかった。

一方の蒼真も、軽い気持ちで声を掛けた相手が、想像以上に「手の届かない存在」だったことを実感していた。

二人はそれぞれ違う理由で、

橘美月という存在を、これまで以上に強く意識することになるのだった。

I「良いね。この後美らは彩音の家で打ちあげに向かった笑。(美優がデートから戻るまで、彩音宅で待機する意図)。そして、サ界が帰った後の会場の余韻を書いて。その後2グループくらいはやりにくいかもしれない笑。美月らの次は畠中、平野、原田とその友達のグループがでたが、学生のありがちなクオリティで、美月らの後はやりにくそう、そしてこの段階では通過かカットか微妙なラインの得点となった。なお、美月らがいなくなった後、理央がミスコンのことで応援してますとか、声をかけられ、絶対に勝つと気持ちを改めたようだ笑。ここまでを踏まえてエピソードをつくって。

A

土曜日・午前

学園祭予選終了後

「じゃあ、お疲れ!」

坂井がギターケースを肩に掛ける。

健太がパンッと手を叩いた。

「とりあえず一回彩音ん家集合!」

彩音が笑う。

「美優帰ってくるまで時間あるしね!」

橋本も頷く。

「反省会兼打ち合わせ。」

「本番用に改善点まとめよう。」

直人が笑う。

「俺テンポ一か所走った。」

坂井。

「いや、十分。」

栞。

「本番までまだ時間あるし。」

美月も自然に頷く。

「うん。」

「もう少し歌い方変えてもいいかも。」

坂井が笑う。

「本人まだ伸ばす気か(笑)」

「せっかくだし。」

「やるならちゃんと。」

それだけ言う。

健太が肩をすくめた。

「ほんま職人気質やな。」

笑いながら七人は会場をあとにした。


残された会場

サ界が帰ったあと。

妙な静けさが残っていた。

客席ではまだざわざわしている。

「いや……。」

「さっきの何?」

「学生?」

「普通にライブやったやん。」

「ボーカル誰?」

「薬学部らしい。」

「CMの子やろ?」

「歌うますぎ。」

「ギターもうまかった。」

「橋本って人なんなん(笑)」

「あのオーバーヘッド何(笑)」

会場全体が、

まださっきのステージの話をしていた。


実行委員

舞台袖。

千佳たち実行委員も苦笑いだった。

一人が言う。

「……順番。」

「失敗したな。」

別の委員。

「サ界最後でもよかったかも。」

千佳も苦笑する。

「これ。」

「後ろ二組かわいそう。」

皆が頷く。


次の出演者

司会が仕切り直す。

「続いて!」

「Blue Impact!」

拍手。

ステージへ上がったのは。

畠中。

原田。

平野。

そして友人二人。

五人組だった。


「よっしゃー!」

「いくぞ!」

元気はある。

勢いもある。

しかし。

始まった演奏は。


学生らしい。

荒削りなバンド。

ボーカルは音程が少し不安定。

ギターも少し走る。

ドラムも荒い。

演奏自体は悪くない。

学園祭なら十分盛り上がる。


だが。


(さっき。)

(聴いちゃったから。)


客席の空気がどうしても違う。

「悪くない。」

「普通にうまい。」

「でも……。」

「さっきがなぁ。」

「比較しちゃう。」

そんな声があちこちから聞こえてくる。


畠中も途中でそれに気付いた。

(やりづら。)

原田も演奏中に苦笑いする。

平野は最後まで集中して演奏した。


終演。

拍手。

ちゃんと拍手はある。

しかし。

先ほどの熱狂ではない。


審査員席。

点数が入力される。

一人が小声で言う。

「通過。」

「ギリギリかな。」

別の審査員。

「保留寄り。」

「後ろ見て決めよう。」


完全に。

ボーダーライン。

畠中たちは、

「どうやろな。」

「微妙やな。」

と笑いながら舞台袖へ戻っていった。


客席

一方。

理央はまだ席に残っていた。

頭の中では、

さっきの美月の歌が繰り返されている。

(あれは。)

(反則。)

そんな時だった。

「九条さんですよね?」

女子学生が声を掛ける。

「はい?」

「今年。」

「ミスコン出ますよね?」

「応援してます!」

「絶対見に行きます!」

「頑張ってください!」

理央は少し驚いた。

「ありがとう。」

女子学生は笑顔で去っていく。


その様子を、

葵が見ていた。

「人気あるやん。」

理央は静かに息を吐く。

「……。」

そして、

ゆっくり前を向いた。

(そうだ。)

(私は。)

(ミスコンで勝負する。)

(歌じゃない。)

(勉強でもない。)

(私の舞台はそこ。)

さっきまでの悔しさは、

少しずつ別の熱へ変わっていく。

理央は拳を軽く握った。

「絶対勝つ。」

その呟きには、

先ほどよりも強い決意が宿っていた。

葵はその横顔を見て苦笑する。

「完全にスイッチ入ったな。」

理央は小さく笑う。

「うん。」

「橘さんには負けたくない。」

その頃。

当の美月はというと、

彩音の家へ向かう道中で健太たちと、

「橋本、あのパス面白かったね。」

「次もっと難しいの投げる?」

「やめろ(笑)」

などと、

本番へ向けた作戦会議をしながら笑っていた。

理央が強く意識している相手は、

相変わらず「勝負」を意識することなく、

仲間と次のステージを楽しみにしていた。

I「良いね。会場はまだざわざわしていた。美月については、美月の歌が凄いね、パフォーマンス凄いね、という声はあるけど、美月がこの場でもノーメイクアクセサリーなしの普段仕様だったこともあり見た目に触れる声はほとんど上がってこない。理央はもしかして美月は外見を見てほしいわけじゃないとかなのか?と少しハッとする。しかし自分は外見は大事だしおしゃれは大事だし、これこそが美月に勝てる武器だと考える。なお、理央は蒼真と恋愛 (相手が所謂ハイスぺイケメン、そして振られることも含め) したことで、恋愛のハードルが高くなっているところはありそう笑 (といってもそういう年齢なので年相応)。

ここで理央のところに千佳が駆け寄ってきて、美月のミスコンのプロフィールが送られてきたと持ってきた (実行委員うちうち、まだ公開前)。美月。趣味特技→料理、歌 (と書いている)。得意科目→化学 (と書いている)。ひとこと→サ界というグループでライブ企画に出ます。ライバル・気になる他の候補者→美優 (友達)、楓花 (友達の恋人)、という感じ。PR部分は本人ではなく実行委員会がかいた笑。→前期薬学部1年首席、必須科目全てS、製薬会社CM主演。理央は自分のはまだ投稿していないが、全く意気込みが感じられないというか、むしろライブ企画のグループの方をPRしてるみたい笑。ちなみにこれは彩音の家で雑談しながら美月が投稿したようだ笑。健太らがサ界をPRしてよ、といったら、美月はそれが良いと、かなり納得した感じでそう書いて、彩音宅ではみんな盛り上がっていた (本当にかいた、とか全体的に面白がっている笑)笑。理央は再び唇を噛みしめる。絶対に勝つ、とその場で口にする。

そのころ蒼真らは大物歌手がここにきていたことを話題にだしており、会場がざわざわしていた。サ界のボーカルのスカウト、らしいぞというのも伝わる。歌を聴いていた人はある意味納得のコメント笑。裏で実行委員たちは、サ界含めてはじめて出場する面々は実力が未知数だから中途半端な順番になって、場違いに上手いのがでてきたときはこういうことになるよね、的な話と、スケジュールを検討していて、美月の歌唱力が想像のはるか上だったことで、ライブ企画に呼んだ若者に人気の中堅バンドを主役に据えるのだが、美月とマッチアップすると食ってしまいかねないと考え、マッチアップしないように時間帯をずらすことにしよう、という話になる笑。

一方で、瀬川らは美月に対するアプローチについて話し合っていて、まず今回会場にきた四人全員は歌ではレッスンとかすっとばして今すぐデビューしていいレベル、という見解。美優の父の会社のCMの仲介ポジションで美月とある意味マネジメント的にかかわれるので、これをどう使うか、ということでかなり真剣。ここで瀬川から、そういえば瀬川らの会社の若者に人気の女性アイドルユニット (歌う・大物というよりこれからを期待される勢いがある時期) がいて、そこに依頼されたけど費用の問題で断ったことがあった。美月が出場するのなら、このアイドルユニットを事情が変わったので出演OK、ということにするのはどうか、というアイディアが出た。美月たちの一つ後ろとか、条件を付けて、あわよくば美月を一時的にでもステージにあげてこっち側をみせよう、みたいな意図があるようだ笑。ここまでを元にエピソードをつくって。

A

土曜日・午前

学園祭予選会場 ― サ界の余韻

サ界が会場を後にしても、客席の空気はなかなか元に戻らなかった。

「あのボーカル、本当に学生?」

「歌が凄かった。」

「最後のサッカー何だったんだ(笑)」

「橋本って人もすごかったけど、あれについていける橘さんも意味分からん。」

「歌もパフォーマンスも完成してる。」

そんな声があちこちから聞こえてくる。

不思議だったのは、

「かわいい」「美人」という話題がほとんど出てこなかったことだった。

理由は単純。

ステージに立っていた美月は、

いつもの大学と全く同じだった。

ノーメイク。

アクセサリーなし。

白を基調としたシンプルな服。

髪はいつもの高めのポニーテール。

華やかな衣装でも、芸能人のようなメイクでもない。

それでも、あの歌とステージで客席を圧倒してしまった。

だから話題になるのは自然と、

「歌が凄い」

「表現力が凄い」

「パフォーマンスが凄い」

という中身ばかりだった。


理央

理央はまだ客席に残っていた。

(……。)

(誰も。)

(見た目の話をしてない。)

その瞬間、

ふと一つの考えが浮かぶ。

(もしかして。)

(橘さん。)

(外見を見てほしいわけじゃないのかな。)

今までずっと、

「飾らない人」

くらいに思っていた。

でも違う。

飾らないのではなく、

飾ること自体に価値を置いていないように見える。

理央は静かに息を吐いた。

(私は違う。)

(おしゃれは大事。)

(外見も武器。)

(見られる努力も必要。)

そして思う。

(そこは。)

(私が勝てる。)

恋愛もそうだった。

蒼真と付き合った。

前年ミスターコン優勝者。

誰もが認めるイケメン。

だからこそ、

自分もその隣に立つ努力をしてきた。

そして、

三か月で振られた。

それ以来、

無意識に恋愛相手へ求める基準も高くなっていた。

理央自身も、

それをどこか自覚していた。


千佳が走ってくる

「理央!」

息を切らしながら、

実行委員の千佳が駆け寄ってきた。

「どうした?」

「これ。」

スマホを差し出す。

「まだ公開前。」

「内々資料。」

画面には、

ミスコン候補者プロフィール。

その中に。


橘 美月


理央はスクロールする。


趣味・特技

料理・歌


得意科目

化学


ひとこと

サ界というグループでライブ企画に出ます。


ライバル・気になる候補者

川崎美優(友達)

楓花(友達の恋人)


PR欄

※実行委員会作成

前期薬学部1年首席

必須科目全S評価

製薬会社CM主演


理央は数秒固まった。

「……。」

「これだけ?」

千佳が苦笑する。

「本人に書いてもらったら。」

「ライブ企画の宣伝しかしなかった(笑)」


彩音の家

一方その頃。

彩音の家。

「書けた?」

健太が覗き込む。

美月。

「うん。」

「見て。」

健太が読む。

「……。」

「サ界というグループでライブ企画に出ます。」

「以上?」

美月。

「うん。」

「サ界見てほしいし。」

坂井が吹き出した。

「俺らの宣伝になっとる(笑)」

直人。

「ミスコンのプロフィールやぞ(笑)」

彩音は机を叩いて笑う。

「本人、全然ミスコンPRする気ない(笑)」

真帆。

「むしろライブの宣伝(笑)」

栞も苦笑する。

「美月らしい。」

美月本人だけが、

「これでいいと思う。」

と本気で納得していた。

部屋中が笑いに包まれた。


再び理央

プロフィールを閉じる。

理央は静かに拳を握った。

「……。」

「絶対勝つ。」

今度は、

誰に聞かせるでもなく、

自分自身へ言い聞かせるようだった。


会場の別の場所

蒼真たちは別の話題で盛り上がっていた。

「見た?」

「芸能事務所。」

「社長来てたらしい。」

「マジ?」

「あとあのベテラン歌手。」

「なんで大学祭?」

「サ界のボーカル。」

「スカウト。」

「らしいぞ。」

「……。」

「まあ。」

「あの歌なら納得。」

誰も否定しなかった。


実行委員会

控室。

委員たちは頭を抱えていた。

「完全に順番ミス。」

一人が言う。

「新人だから。」

「未知数だった。」

「まさか。」

「あそこまでとは。」

別の委員。

「次から順番考え直そう。」

さらに。

スケジュール表を広げる。

「本番。」

「若手人気バンド呼ぶよね。」

「うん。」

「でも。」

「サ界と続けたら。」

「食われる。」

全員が黙る。

「……。」

「時間ずらそう。」

「その方がいい。」

「両方得する。」

こうして、

本番タイムテーブルは急遽見直されることになった。


一方・瀬川たち

大学を出た四人。

近くのカフェへ入る。

社長が先に口を開く。

「結論。」

「どうだった?」

ベテラン歌手。

「歌。」

「今すぐデビュー。」

役員も頷く。

「レッスン不要。」

「現場経験だけ積めばいい。」

社長も同意した。

「四人一致だな。」

瀬川はほっと息をついた。

「ありがとうございます。」


しかし問題は。

「どう口説く。」

だった。

瀬川が資料を取り出す。

「一つ。」

「美優さんのお父様。」

「不動産会社CM。」

「仲介に入れます。」

「そこが唯一。」

「継続的に接点を持てる。」

社長も考え込む。

「確かに。」

「今は急がない方がいい。」

「信頼を積む。」

その時。

瀬川が何か思い出した。

「あ。」

「そういえば。」

「うちの女性アイドル。」

「学園祭出演依頼。」

「前に断りました。」

役員。

「ああ。」

「予算の問題。」

「断ったな。」

瀬川は笑った。

「事情変わりました。」

「受けません?」

社長が目を細める。

「なるほど。」

瀬川は続ける。

「サ界の直後。」

「あるいは一つ後。」

「条件付きで。」

「もし橘さんを。」

「一瞬でも。」

「ステージへ呼べれば。」

「芸能の空気を体感してもらえる。」

ベテラン歌手も笑う。

「押し売りじゃなく。」

「"見てもらう"だけ。」

社長は静かに頷いた。

「悪くない。」

「すぐ契約を迫るより。」

「まず世界を見てもらう。」

「その方が橘さんには合っている。」

瀬川は力強く頷く。

「はい。」

「焦らず。」

「でも諦めません。」

こうして、

芸能事務所側もまた、

橘美月という一人の大学生をめぐって、新たな一手を打ち始めるのだった。

I「良いね。実行委員に、即瀬川から一度断ったアイドルユニットを出演させてもよい、という連絡が来た。条件はサ界、橘美月のすぐあとにしたい、との連絡が来た。対応した実行委員会の上の方の人は快諾し、その場に共有されて実行委員側が騒がしくなる笑。同時に予選も進み、急遽プロが1枠加わったことで、予選の枠が2枠減ることが会場に通達される (プロなので時間長い)。そして畠中らのグループはその影響で予選落ち (そうなっていなければボーダーで合格) で、原田らは露骨に悔しそう。この時点で、明らかに頭一つ以上ぬけてクオリティが高いグループは出場を確定させてだいたい帰っており、明らかに足りてないグループも落選確定で多くは帰っている (大学の学園祭だし、レベル差がでるのもそれはそう)。残っているのは等落選上にある激戦区の面々だったようだ。会場が騒がしくなったのは理央も気づいていて、サ界の次ならやってくれる、ということでアイドルユニットがくることに驚愕。橘美月の影響だろうと予想して更に唇をかむ。一方で、理央を振った後に蒼真が付き合っている相手は読モで、後に美月の友達になる中西ひなたの友達の、関西でかなり知名度のある読モで、大学卒業後は芸能界入りすると思われている人物 (なので、蒼真は瀬川のところの社長の顔もしっていたようだ)。理央が芸能界を意識する原因でもあり、理央の代わりに蒼真とつきあった相手がそういう相手だから、芸能界を意識しているようだ。ここまでをエピソードにして。

A

土曜日・昼前

学園祭実行委員会本部

サ界の演奏が終わってから三十分ほど。

予選はそのまま続いていた。

しかし。

実行委員会本部では一本の電話で空気が変わる。

「はい、学園祭実行委員会です。」

電話を受けた三年生の委員長が、

一瞬目を丸くした。

「……え?」

周囲の委員が顔を上げる。

「どうした?」

委員長は受話器を押さえながら答える。

「○○プロダクションです。」

(瀬川さんのところだ。)

部屋の空気が一気に変わった。


電話の内容

「以前、お断りした出演依頼ですが。」

「事情が変わりました。」

「もしまだ可能でしたら。」

「弊社所属アイドルユニットを出演させていただきたい。」

委員長は思わず立ち上がる。

「もちろんです!」

「ぜひお願いします!」

電話の向こう。

「条件があります。」

「出演順だけ。」

「サ界の直後。」

「できれば橘美月さんたちのすぐあと。」

「その順番を希望します。」

委員長は迷わなかった。

「問題ありません。」

「こちらで調整します。」

「ありがとうございます。」

電話が切れる。


数秒の静寂。

次の瞬間。

「マジか!!」

「通った!」

「プロ来るぞ!」

「嘘だろ!」

「急げ急げ!」

実行委員室が一気に騒がしくなった。

千佳も驚いていた。

「え……。」

「本当に?」

別の委員。

「関西最大手だぞ?」

「去年呼ぼうとして断られたところ。」

「なんで急に。」

数人が顔を見合わせる。

そして、

全員が同じ人物を思い浮かべる。

「……。」

「橘さん。」

誰かが小さく言った。

「たぶん。」

「それしか理由ない。」


タイムテーブル変更

ホワイトボードへ新しいスケジュールが書かれる。

ライブ企画

サ界

プロアイドルユニット

人気バンド

その他

委員長が苦笑する。

「完全に予定変わったな。」

「でも。」

「これは仕方ない。」


会場アナウンス

しばらくして司会がマイクを持つ。

「皆様、お知らせがあります!」

ざわつく客席。

「ライブ企画につきまして。」

「急遽。」

「プロアーティストのゲスト出演が決定いたしました!」

会場がどよめく。

「えーーーー!」

「マジ?」

「誰?」

「そのため。」

「時間の都合上。」

「本選出場枠を二枠減らします。」

「審査基準も再調整いたします。」

一気に緊張感が増す。


畠中たち

舞台袖。

結果発表。

「Blue Impact。」

「……落選。」

一瞬静まり返る。

原田が舌打ちする。

「くそっ!」

畠中は苦笑い。

「しゃーない。」

平野が小さく笑う。

「俺ら。」

「タイミング悪かったな。」

審査員も申し訳なさそうだった。

「もし変更がなければ。」

「ボーダーライン。」

「通過の可能性は十分ありました。」

それだけに。

余計悔しい。

原田はステージを見ながら呟く。

「全部。」

「橘のせいやん……。」

もちろん。

美月本人は何もしていない。

だが、

結果として。

サ界が空気を変え。

プロを呼び。

大会全体の構成まで変えてしまった。


残る会場

この頃になると、

会場の空気も少し変わっていた。

圧倒的実力組。

既に通過確定。

ほとんど帰宅。

逆に。

明らかに届かないグループ。

こちらも結果を受けて帰宅。

残ったのは。

ボーダーライン付近。

一組の結果で順位が入れ替わる、

まさに激戦区だった。


理央

理央は会場のざわめきに気付く。

「何?」

葵がスマホを見る。

「プロ来るって。」

「え?」

「しかも。」

「サ界の次。」

理央は固まる。

「……。」

(やっぱり。)

(橘さん。)

(影響なの。)

また唇を噛む。

悔しい。

認めたくない。

でも。

そう考えるしか説明が付かなかった。


蒼真

少し離れた場所。

蒼真もその話を聞いていた。

「社長。」

「本当に来てたんだ。」

友人が聞く。

「知ってるの?」

蒼真は頷く。

「まあ。」

「顔だけ。」

理由は単純だった。

現在付き合っている恋人。

関西でもかなり有名な読者モデル。

芸能界入りがほぼ確実と言われている存在。

撮影現場やイベントで、

瀬川の事務所関係者と何度も顔を合わせていた。

当然。

社長も。

役員も。

知っている。

「だから。」

「さっきの人たち。」

「本物。」

蒼真はそう断言した。


理央の胸中

理央はその話を聞いていた。

蒼真と別れてから。

彼が付き合った相手。

自分より芸能界に近い女性。

それは。

理央の中で、

ずっと引っかかっていた。

(私じゃなくて。)

(あの子だった。)

(芸能界に近い世界。)

(私も。)

(そこへ行けると思ってた。)

そんな中で。

今日。

芸能事務所は。

自分ではなく。

美月だけを見て帰っていった。

それが、

理央の競争心にさらに火を付ける。

拳を握る。

「……。」

「ミスコンだけは。」

「絶対に勝つ。」

その決意だけは、

先ほどよりさらに強くなっていた。

一方その頃。

当の美月は彩音の家で、

「お昼どうする?」

「余ってるカレー温める?」

「いや、さっき食べた(笑)」

などと、

予選通過を仲間と笑いながら振り返っており、

自分の歌が学園祭全体や芸能事務所の動きを変え始めていることには、まったく気付いていなかった。

I「良いね。ここで、予選会場で立っている理央の前に、ミスコンの参加者の顔と名前が公表されたことが話題になっていた。紹介ページもアップした人のは見える。ここで誰が勝つと思う?みたいな話を男女のグループ (2年、学部混合)がしていた。一人が橘さんか楓花さんじゃないの?という。今年は 薬学部1年で美月、美優、理央がキャラ被っていて、美月と理央が成績優秀で被っている。成績では美月、今回の歌 (プロの歌手なみ)、CMを加味したら理央では美月にかてないだろ (意訳)。二人目 (残念ながら九条さんはしかたないね、今年は無理だな)。三人目 (橘さんのほうが見た目もかわいいし) (これは好みだが笑)。

これを聞いて、理央は「は?」と食って掛かる (食って掛かるときはまるでスポーツしているかのごとく息が荒い笑)。自分が九条理央だと、伝え、私の方が容姿は上でファッションセンスは上みたいに食い下がり、しばらく口論した後、理央は私は絶対勝ちます、橘美月には負けませんと伝える笑。2年の集団、引き気味笑。原田らは、自分たちが落選して面白くなかったけど、理央が食って掛かるところは面白がって動画で撮影していた笑。

うわーおかないとか、なんか引き気味な対応が会場にきこえたところで、蒼真が「そんなことはない、ちゃんと女だ、可愛いよ (意訳、もう少しイケメンっぽく言う笑)」みたいなフォローを入れて、会場が黙り、理央が照れて蒼真から目をそらす。理央は小さく「ずるい」と言う。蒼真が今年のミスコンは結果が楽しみだなてきなコメントをのこして理央の肩を軽くたたいて去る。葵が蒼真に(憧れの先輩をみるような感じで、理央の友達の七沢葵ですと入る) 絡んで期待するような感じで声をかけるが流される (頭ぽんぽんされる、葵照れる)笑。理央より決意を新たにしたような表情で会場を後にする。

一方そのころ、美月はというと、リクエストされたので彩音の家で生キャラメルを使ったスイーツを作ってみんなで食べていた笑。ミスコンの話は全く出ていないし、理央は話題にあがっていない。これを元にここまでエピソードを作って。

A

土曜日・午後

学園祭予選会場

予選は終盤へ向かっていた。

通過者もほぼ出そろい、会場には結果待ちや見学の学生が残っている。

その中で、新たな話題が広がっていた。

「ミスコンのプロフィール公開されたらしいよ。」

「もう見れる。」

「マジ?」

学生たちが一斉にスマホを開く。

今年の候補者一覧。

そこには、

橘美月

九条理央

川崎美優

楓花

などの名前が並んでいた。


二年生グループ

近くでは二年生の男女五人ほどが雑談していた。

「あー。」

「今年誰が優勝するんやろ。」

一人が画面を見ながら言う。

「橘さんか楓花さんじゃない?」

別の男子が頷く。

「楓花さん去年も人気あったし。」

「でも今年は橘さん強そう。」

三人目。

「薬学一年やろ?」

「首席。」

「CM主演。」

「さっき歌。」

「しかもあれプロやん。」

「もう勝てんやろ。」

四人目も笑う。

「九条さんも可愛いけど。」

「今年はしゃあない。」

「相手が悪い。」

すると女子学生が口を挟む。

「私は普通に橘さんの方が好み。」

「かわいいし。」

「ナチュラルで。」

男子も頷く。

「俺も。」

「好み。」

「九条さんは綺麗系。」

「橘さんは可愛い系。」

「俺は橘さんかな。」


理央

その会話は、

理央のすぐ後ろで行われていた。

最初は聞き流そうとした。

しかし。

「今年は九条さん無理。」

その一言で、

理央の足が止まる。

さらに。

「橘さんの方が可愛い。」

理央の呼吸が変わる。

肩が上下する。

まるで全力疾走の前のように、

呼吸が速くなる。

葵が横を見る。

(あ。)

(まずい。)

理央は振り返った。

「……は?」

五人が固まる。

理央は一歩前へ出る。

「今。」

「九条さん無理って言いました?」

男子たちは顔を見合わせる。

「え?」

「いや。」

理央は胸を張る。

「私。」

「九条理央です。」

空気が止まる。

「え。」

「本人?」

理央は一気にまくし立てた。

「私の方が。」

「容姿も。」

「ファッションも。」

「努力してます。」

「ちゃんと見てから言ってください。」

男子も負けじと答える。

「いや。」

「それは好みやから。」

「俺らは橘さんの方が好きってだけ。」

「歌も。」

「CMも。」

「成績も。」

「全部含めて。」

理央はさらに一歩前へ。

「だから?」

「勝負はこれからです。」

「私は。」

「絶対勝ちます。」

「橘美月には。」

「負けません。」

その声は、

会場中に響いた。


周囲

「……。」

「うわ。」

「本人や。」

「熱。」

少し引き気味になる二年生たち。

その様子を、

離れた場所で見ていた原田が笑う。

「おもろ。」

畠中も吹き出す。

「動画動画。」

平野。

「お前ほんま(笑)」

しかし。

原田はもう撮っていた。

「これはネタや。」

「うわー。」

「怖。」

「でもおもろ。」


蒼真

そこへ、

人混みをかき分けて一人の男性が歩いてきた。

蒼真だった。

場の空気を見て、

状況を一瞬で理解する。

「まあまあ。」

穏やかに笑う。

「そんなこと言わなくても。」

全員が振り向く。

蒼真は理央を見る。

少し笑って。

昔と変わらない、

柔らかい声で言った。

「理央。」

「ちゃんと可愛いよ。」

「そこは心配しなくていい。」

「女としての魅力はある。」

「だから。」

「そんなにムキにならなくても。」

会場が静まり返る。

理央も。

完全に固まる。

耳まで赤くなる。

目を逸らし。

小さく。

「……ずるい。」

とだけ呟いた。

蒼真は苦笑する。

「今年。」

「楽しみにしてる。」

「結果。」

そう言って、

理央の肩を軽く叩く。

そして。

自然に歩き去っていった。


「あっ!」

葵が慌てて追いかける。

「蒼真先輩!」

蒼真が振り返る。

「はい?」

「私。」

「七沢葵です!」

「理央の友達です!」

「去年ミスター見てました!」

蒼真は笑う。

「ありがとう。」

葵は少し期待する。

(何かあるかな。)

蒼真は。

ぽん。

と軽く頭を撫でた。

「頑張って。」

「じゃ。」

それだけ。

歩いていってしまう。

葵はその場で固まる。

「……。」

顔が赤い。

「え。」

「ちょ。」

「イケメン。」

一人で照れていた。


理央

一方。

理央は深呼吸した。

さっきまでの勢いはない。

しかし。

目だけは、

今まで以上に真っ直ぐだった。

(勝つ。)

(絶対。)

(負けない。)

その決意を胸に、

理央は静かに会場を後にした。


同じ頃――彩音の家

「できたよ。」

美月が皿をテーブルへ置く。

「生キャラメル使ってみた。」

彩音が歓声を上げる。

「うわーー!」

「絶対うまいやつ!」

健太。

「また店開けるやん。」

坂井も笑う。

「ライブ終わったと思ったら。」

「今度はパティシエ。」

直人。

「写真撮ろ。」

栞も微笑む。

「いただきます。」

全員でスプーンを入れる。

「……。」

「うまっ!」

「何これ!」

「やば。」

「店や。」

「普通に売れる。」

美月は嬉しそうに笑う。

「よかった。」

「生キャラメル余ってたから。」

その場の話題は、

ライブの改善点。

明日の予定。

デートから帰ってくる美優のこと。

そして、

次のライブ。

誰一人。

ミスコンの話はしなかった。

九条理央の名前も、

この部屋では一度も話題に上がらなかった。

美月はそんなことも知らず、

みんなが美味しそうにスイーツを食べる様子を見て、

満足そうに微笑んでいた。

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