橘美月シリーズ大学編_#27「……やめる。」菊池の叱責で崩れる美優:「私たちは、美優と一緒に卒業したいです。」

橘美月シリーズは女子会もので、美月さんが大学生 (アップしている段階で阪大・薬・4年) の設定なので、本編とは別に美月さんの友達を作り、大学側も絡められるようにしておきましょう。メイド服などのありそうな服はメインモデルたちはある程度着てしまったので、サブのモデルを追加する意図があります笑

前回:「お前励ましてこいよ」比較して揺れる二人:間が悪い美優、食ってかかる理央。

I「橘美月×アップ×夜景。プロンプトはこちら

I「良いね。美優はすぐ皆に追いつかれる (この面々の中で美優は運動苦手な部類なのとおしゃれ重視で走るのに向いた格好していないせい)。一旦皆で囲い、真帆が美優の手を握る。美優はもう帰る、と言うが、健太、彩音らはここで美優を一人にしてはだめだと皆に声をかける。泣き止みつつあり少し落ち着いたところで、美優は手元に鞄がないことに気付いて、更にあせり、狼狽するが、美月が鞄をもっていて手渡して事なきを得る (貴重品など含めて何かがなくなることはなかった)。そのまま美優は引きづられるように三限目へ、生物系の実習に進む。美月らのグループが実習室に入るころには、理央らのグループ (理央、葵、工藤、林、宮脇)、畠中らのグループは既に着席しており、2限~数学系の出来事は両方のグループに意識されているようだ。ここまでをエピソードにしてみて。

A

学食を飛び出した美優。


だが。


数秒後。


「美優!」


健太。


「美優!」


彩音。


「待って!」


真帆。


そもそも。


美優は運動が得意ではない。


しかも今日の服装は、

おしゃれ重視。


走る前提ではない。


結果。


30秒も経たず。


捕まった。


「はぁ……はぁ……」


美優。


「もう帰る……」


涙声。


「今日は無理……」


彩音が即答する。


「だめ」


「え」


「今帰したらあかん」


健太も頷く。


珍しく真面目な顔だった。


「今日は一人にしたらあかん」


「……」


美優は俯く。


すると。


真帆が前へ出る。


何も言わず。


美優の手を握る。


ぎゅっと。


「大丈夫」


短い。


でも。


美優には十分だった。


少しずつ呼吸が落ち着く。


涙も止まり始める。


そして。


数分後。


美優が顔を上げた。


「……あれ?」


全員。


「?」


「鞄」


沈黙。


「鞄ない」


全員。


「え?」


美優の顔色が変わる。


財布。


学生証。


スマホ。


全部入っている。


「え」


「どこ」


「待って」


「置いてきた?」


狼狽。


完全にパニック。


そして。


「はい」


後ろから声。


美月。


当たり前のように立っていた。


そして。


美優の鞄を持っていた。


「え」


「学食」


「置いてったから」


「……」


「貴重品確認したけど多分大丈夫」


美優。


数秒固まる。


それから。


ぽろっ。


また涙。


今度は別の意味。


「ありがとう……」


美月。


「うん」


それだけ。


特別な顔もしない。


まるで当然みたいに。


鞄を返す。


健太が笑う。


「さすがやな」


「普通に気付いてた」


「忘れ物多いから」


美月。


「そういう問題?」

彩音。


(笑)


少しだけ。


空気が軽くなる。


そして。


3限。


生物系実習。


逃げられない。


皆で移動。


半ば引きずられるように、

美優も一緒に歩く。


「休む?」

栞が聞く。


美優は首を振る。


「出る……」


その声は小さい。


でも。


さっきよりは前を向いていた。


実習室。


既に人が集まっている。


そして。


理央たち。


  • 理央
  • 工藤
  • 宮脇

先に着席。


さらに。


少し離れた場所。


畠中たちのグループ。


こちらもいる。


当然。


2限の件。


学食の件。


皆知っている。


理央は美優たちを見る。


そして。


美優の赤い目に気付く。


少しだけ表情が曇る。


理央は競争心は強い。


でも。


あそこまで落ち込まれると、

流石に後味が悪い。


一方。


葵。


完全に察していた。


(あー……)


(これは長引くやつや)


工藤も。


何も言わない。


ただ。


畠中の方をちらっと見る。


畠中。


流石に少し気まずそう。


本人は悪意のつもりではなかった。


だが。


結果は最悪だった。


そんな中。


美月たちが実習室へ入る。


健太。


彩音。


真帆。


栞。


坂井。


直人。


美優。


そして美月。


理央は無意識に美月を見る。


すると。


美月。


いつも通り。


「実習めんどくさいな」


栞にそう言っていた。


本当にいつも通り。


理央は思う。


(なんであの人だけ平常運転なんだろう)


午前中だけで、

あれだけ色々あったのに。


だが。


その疑問を考える暇もなく。


担当教員が入室した。


「それでは始めます」


実習開始。


それぞれが、

それぞれの思いを抱えたまま、

午後の時間が始まった。

I「良いね。ここで実習が始まる。今回は生物系でよくある顕微鏡操作だとか、スケッチがあるような内容だった。まずは何の変哲もなく、授業が進む。ここで畠中らのグループというか畠中とその友達の原田 (男、チャラい系) のペアがやや騒がしい笑。移動する局面で、原田がふざけて、美月、栞ペアに全体で移動とかみたいなタイミングで、わざとぶつかりにいく。まず美月にぶつかりにいくが、美月は格別な動きは見せず、予想してたかのようにタイミングを外して原田はぶつかりにいく機会をつくれなかった笑。美月は特に意識していない感じ (なので美月の身体能力などは表にでず表面上何も起こらず、原田的には面白くない笑)。原田は次に栞にぶつかりに行くのだが、栞がスケボーや居合道とかでやっているような動きがとっさに出て、回避 (見た目などの印象に反して、動きにキレがある笑)。これでいろんな人が振り返って意外がる笑。美月らのグループは知ってたから驚かず、逆に出席番号で原田と近い林などは驚いていた (対して橋本などは、さも当たり前、といった表情で驚く様子なし笑)。理央は自分のことに夢中で、なにやら栞で周りが軽くざわざわしているので振り返って、「何?」みたいな反応。ここに担当教員が原田を注意し、全体に静かにするように場を制する。その時、偶然近くを通って、美月のスケッチを見て、橘さん素晴らしい、みたいに美月を全体の前で褒めるというか、まるでお手本ですよ、みたいに紹介する。美月はありがとうございます的な、褒められ慣れている人の対応だけど、全体的に自然。ちょっとうれしそうな表情もする。これでむっとした理央が、私のも見てくださいと教員に主張して、「九条さんも良いね」と評価されるが、美月を全体に紹介したときのほうが大げさで差があるように見えて、納得いってなさそうな表情。なんなら理央と一緒にペアの工藤も教員から評価され、(アピールしてない)、更にむっとした表情をするも、工藤は苦笑い笑。一方で、美優は今日は彩音とペアではなく (彩音より若い番号の学生が欠席で不在)、苦手な菊池 (男、成績優秀側ではあるけど、友達付き合いは少なく群れない傾向、毒舌でキツメの性格) とペアかつ昼までの経緯があって、頭があまりまわっていないというか、ほとんど手を動かせていない常態だった。彩音や真帆、健太が美優を時折心配そうに眺めていた。これをベースに、ここまでをエピソードにしてみて。

A

月曜日・3限 生物学実習

2限の空気を引きずったまま、学生たちは生物学実習室へ入っていく。

今日のテーマは、

  • 顕微鏡観察
  • 生体組織のスケッチ
  • 所見の記録

という、ごく一般的な実習だった。


実習開始

担当教員が説明する。

「今日は顕微鏡で観察したものを正確にスケッチしてもらいます。」

「写真ではなく、自分の目で見て描くこと。」

「特徴を捉えることが重要です。」

学生たちは顕微鏡を覗き始める。

最初の30分ほどは何事もなく進んだ。


騒がしい畠中・原田ペア

一方。

畠中と同じグループの原田は相変わらずだった。

「おい、見えへん(笑)」

「お前ちゃんと覗け(笑)」

「先生来るぞ(笑)」

実習中でもテンションが高い。

担当教員からも一度、

「私語は控えて。」

と軽く注意を受ける。


顕微鏡の場所を移動

途中。

別の標本を見るために学生全員が移動する時間になる。

教室内が少しだけ混み合う。

そこで。

原田がニヤッと笑った。

(ちょっと遊んだろ。)

視線の先には、

美月と栞。


原田、美月にぶつかろうとする

原田は歩幅を少し変え、

美月の進行方向へ身体を寄せる。

ほんの軽く肩が当たる程度。

そのくらいの悪ふざけ。

しかし。

美月は、

本当に自然に、

歩くタイミングを一歩だけ変えた。

大きく避けたわけではない。

ジャンプしたわけでもない。

ただ、

「あ、ここ人いるな」

くらいの自然さで歩幅を調整しただけ。

結果。

原田は空振り。

「……あれ?」

本人だけが拍子抜けする。

美月は気付いた様子もなく、

そのまま歩いていく。

(なんやねん……)

原田としては、

反応が欲しかった。

しかし、

何も起きない。

美月は本当に何も意識していないようだった。


次は栞へ

「じゃあこっち。」

原田は今度は栞の方へ。

少し身体を寄せる。

その瞬間。

栞の身体が、

すっと動いた。

半歩。

ほんの僅かな体重移動。

肩を入れ替えるような自然な動き。

原田は空を切る。

「え?」

栞本人も、

「あ。」

という表情。

完全に無意識だった。

居合道。

スケートボード。

幼い頃から身体に染み付いた動き。

考えるより先に身体が反応した。


周囲がざわつく

「今の見た?」

「え?」

「速くなかった?」

「避けた?」

実習室が少しだけざわつく。


橋本。

(まあそうなる。)

特に驚かない。

直人も苦笑。

健太も、

「栞やし。」

くらいの反応。

真帆も、

「あれ普通に出るんだ。」

彩音も笑っている。


一方。

林。

「え?」

「今の何?」

完全に驚いていた。

宮脇も、

「運動できるタイプなん?」

と首を傾げる。


理央は、

ちょうど自分の顕微鏡に集中していた。

周りがざわついて初めて顔を上げる。

「……何?」

葵が小さく笑う。

「田中さん避けた。」

「?」

理央はよく分からないまままた前を向いた。


教員が場を制する

担当教員がすぐに気付く。

「原田君。」

「遊ばない。」

「移動は静かに。」

「はい……。」

原田もしぶしぶ席へ戻る。

実習室は再び静かになった。


偶然、美月のスケッチを見る

教員はそのまま学生の机を巡回する。

そして、

偶然。

美月の机の前で止まった。

「……。」

数秒見つめる。

「橘さん。」

美月が顔を上げる。

「はい。」

教員が少し笑った。

「これ、素晴らしい。」

実習室が静かになる。

「皆さん。」

教員が美月のスケッチを持ち上げる。

「これくらい特徴をしっかり捉えられると非常に良いです。」

「陰影も必要以上に描き込まず、観察点が整理されています。」

「お手本になるスケッチですね。」

教室全体が見る。

美月は少し照れくさそうに笑った。

「ありがとうございます。」

自然だった。

褒められ慣れている人の反応。

嬉しそうではある。

でも必要以上に得意げにもならない。


理央、すぐ動く

それを見た理央。

(今だ。)

「先生。」

教員が振り向く。

「私のも見ていただけますか?」

「もちろん。」

教員は理央のスケッチを見る。

「うん。」

「九条さんも良いですね。」

「観察は丁寧です。」

「ありがとうございます。」

理央は頷く。

しかし。

("も"……。)

さっき。

美月には、

全体へ紹介。

「お手本」。

「素晴らしい」。

自分は、

「良いですね」。

その差が妙に気になる。

(なんで。)


工藤も評価される

さらに。

教員は隣を見る。

工藤。

何もアピールしていない。

教員が自然に言う。

「工藤君もいい。」

「こちらも非常に見やすい。」

工藤は苦笑い。

「ありがとうございます。」

理央。

(……。)

ますます面白くない。

工藤は何もしていない。

自分だけアピールしたみたいになってしまった。

工藤も空気を察し、

(俺巻き込まれたな……。)

と苦笑するしかなかった。


一方、美優

教室の反対側。

今日は運が悪かった。

彩音よりも若い番号のペア学生が欠席。

その結果。

美優の相手は、

菊池。

成績優秀。

しかし。

友達付き合いは少ない。

毒舌。

言葉もストレート。

「川崎さん。」

「そこ違う。」

「……。」

「見えてる?」

「……ごめん。」

美優は手が止まっていた。

昼の出来事。

数学。

涙。

全部残っている。

顕微鏡を覗いても、

頭に入ってこない。


離れた場所から。

彩音がちらっと見る。

真帆も見る。

健太も気にしている。

誰も口には出さない。

でも全員、

「今日は美優が危ない」

そう感じながら、

午後の実習を続けていた。

I「良いね。更に続き。ここで美優は更に比較してへこむ。経緯は良く把握できていないけど、栞、美月、理央、工藤がそれぞれ何かしら評価されていた。それに比べて自分は、と落ち込んでいる。ここで間が悪く、菊池が「実習にも手がついていないみたいだし」「体調悪いなら今日休んだら?」といった発言をする。その横で畠中、原田、そしてそのグループの平野が雑談していて、平野に原田がお前もなんか面白いことやれ、という。対して平野がお前らのは茶番やろ、と返す。畠中は俺はやり切ったぞみたいなリアクション。これが間が悪く、「自分のは茶番だ」みたいなのが印象に残って更に下を向く (引きずる)。ここで間が悪く、菊池がなにか美優に伝えているようだが聞いてなく、美優はやっといて、みたいな態度をとった。これで少しイライラしていた菊池が、人に放り投げて自分はやらないのはいい加減にしろ、体調が悪いなら休め、人にやらせて楽をするつもりなら迷惑だ、的な言葉を返す。茶番と言われ、迷惑、という言葉が頭に残って、美優はその場でぽろぽろなく。ここで菊池が、追い打ちで、女だから泣けば許されると思うなよ、いつまでも子供みたいに、みたいに毒舌で追い打ち。美優は、瀬川に言われた言葉を思い出し、「アイドルとしてなしではないけど、覚悟が足りない (意訳)」と言われたことを思い出し、いたいところを突かれたような気持になり、その場に座り込んでかなり大げさに泣く。ここで彩音ら美月らのグループや教員らが美優のもとにかけよるも、美優は返事を返さず泣くばかり。仕方ないので、教員がTA (女性) に指示をして、美優を実習室の外に一旦運ぶ (実習はこの時点で終盤だった、この実習が終わるとこの日の授業は終わり)。実習が終わり、彩音らは皆で美優のところに向かうと、まだ泣いていた。仕方ないので、皆で美優を美優の家まで連れて行くことになり、一目があるので、彩音と真帆がタクシーで美優を連れて家に、そしてまだ別に授業をとっている面々は後で美優のうちに向かうことになった  (美月も追加でとっている授業がまだあった)。彩音や真帆が美優にずっと声をかけたり、手を握るとかをしてフォローしようとしてる。移動中も美優は泣いている。これをもとに続きのエピソードをつくって。

A

月曜日・3限 生物学実習(続き)

実習は終盤へ入っていた。

顕微鏡観察も終わりに近づき、最後のスケッチと記録をまとめる時間。

教室全体も落ち着きを取り戻していた。

しかし、一人だけ。

美優だけは、まだそこから戻れていなかった。


「なんで私は……」

美優は視線を落としたまま考えていた。

頭の中では、

さっき見た光景が何度も繰り返される。


栞が周囲を驚かせた。

美月がお手本として紹介された。

理央が褒められた。

工藤も評価された。


(みんな何か評価されてる。)

(私は……。)

(何もできない。)

(数学も。)

(実習も。)

(また迷惑かけてる。)

胸がどんどん苦しくなる。


菊池の一言

隣では菊池が実習を進めていた。

彼は悪意というより、効率を重視する性格だった。

だから率直だった。

「川崎さん。」

返事はない。

「……実習も手が止まってるし。」

少し間を置いて続ける。

「体調悪いなら今日は休んだ方がよかったんじゃない?」

声色は冷静だった。

責め立てる口調ではない。

だが、今の美優には十分刺さった。


間の悪い雑談

そのすぐ近く。

畠中、原田、平野の三人。

実習の合間に小声で雑談している。

原田が笑う。

「おい平野、お前も何か面白いことやれよ。」

平野は呆れた顔をする。

「いや、お前らのあれ茶番やろ。」

原田が笑う。

畠中も笑いながら、

「俺はやり切ったぞ。」

と言う。

三人にとっては、

美優とは無関係の雑談だった。

しかし。

美優の耳には、

「茶番」

という言葉だけが強く残る。

(私のこと……。)

(泣いたのも。)

(さっき逃げたのも。)

(全部茶番なんだ。)

思考が悪い方向へ繋がっていく。


聞こえていない

菊池が何か説明していた。

「この倍率なら――」

「川崎さん?」

返事がない。

「……。」

ようやく美優は顔を上げる。

でも内容は全く入っていなかった。

「……ごめん。」

小さく言う。

「やっといて……。」

その一言で、

菊池の表情が変わった。


菊池の叱責

「それは違う。」

教室は静かだった。

だから声はよく通った。

「人に任せて、自分はやらない。」

「それは駄目でしょ。」

美優は俯く。

菊池は続ける。

「体調が悪いなら休めばいい。」

「でも出るならやる。」

「人にやらせて、自分は何もしないのは迷惑だ。」

「迷惑。」

その言葉だけが残る。


「迷惑」

(迷惑。)

(また。)

(私は迷惑。)

(比較して。)

(泣いて。)

(何もできなくて。)

頭の中で、

その言葉だけが何度も反響する。


最後の一撃

菊池も少し感情的になっていた。

「……それと。」

「女だから泣けば許されるなんて思わない方がいい。」

「大学生なんだから。」

「いつまでも子どもみたいじゃ困る。」

その瞬間。

美優の中で、

別の言葉が重なった。


瀬川。

『可能性はある。』

『でも覚悟が足りない。』


覚悟。


子ども。


迷惑。


全部が一つになった。


ぽろ。


ぽろぽろ。


涙が止まらない。


「うっ……。」


次の瞬間。


美優はその場にしゃがみ込んだ。


肩を震わせながら、

声を押し殺すこともできず、

大きく泣き始めた。


教室中が止まる

彩音が最初に立った。

「美優!」

真帆も走る。

「美優!」

健太も立ち上がる。

「先生!」

栞も美月も駆け寄る。

直人も坂井も席を離れる。

理央も思わず立ち上がった。

葵も顔色が変わる。

工藤は菊池を見る。

菊池自身も、

ここまでになるとは思っていなかった。

言葉を失っていた。


教員の判断

担当教員がすぐに前へ出る。

「実習を一旦止めます。」

そして女性のTAへ。

「お願いできますか。」

「はい。」

TAは美優の横へしゃがむ。

優しく声を掛ける。

「川崎さん。」

「少し外へ行こうか。」

しかし、

返事はない。

ただ泣き続けるだけ。

彩音と真帆も一緒に支える。

ゆっくり立たせ、

実習室の外へ連れて行く。


教室には重い空気だけが残った。

誰も喋らない。

原田も。

畠中も。

平野も。

菊池も。

皆黙っていた。


実習終了

実習は予定より少し早く切り上げられた。

学生たちは静かに片付ける。

終わると同時に、

彩音たちはすぐ外へ向かった。


廊下。

ベンチ。


美優はまだ泣いていた。

呼吸も乱れている。

真帆は隣に座り、

ずっと手を握っている。

彩音もしゃがみ込み、

「大丈夫。」

「今日はもう頑張らなくていい。」

と何度も声を掛ける。

しかし、

美優は首を振ることもできない。


帰宅を決める

健太が周囲を見る。

「今日は帰ろう。」

全員頷いた。

人目もある。

大学でこれ以上休ませるより、

家で落ち着かせた方がいい。

彩音が言う。

「私と真帆で送る。」

「タクシー呼ぶ。」

健太も頷く。

「頼む。」

「俺らは次の授業あるから終わったら行く。」

栞も、

「私も後で行く。」

直人も坂井も同意する。

美月も静かに言った。

「私も次の授業終わったら行く。」


タクシーの中

美優は窓際に座る。

真帆が隣。

ずっと手を握ったまま。

彩音は前席から何度も振り返る。

「大丈夫。」

「今日は何も考えなくていい。」

「家着いたらゆっくりしよう。」

返事はない。

ただ。

少しだけ。

真帆の手を握り返す力が強くなった。

それだけが、

今の美優が返せた精一杯の返事だった。

I「良いね。その後、美優の家 (親が美優のために買った家族向けの不動産の1室) につく。美優は未だ泣き続けたまま、彩音、真帆らに言葉を返さない。すこし泣き方が落ち着いた後、消えそうなくらいか細い声で、「大学やめる」(やめたいではなく、やめる)と美優が答えた。彩音、真帆らはここで辞めたら美優はずっと引きずると思い、思いとどまらせようとするが、美優はうつむき、彩音、真帆らと言葉を交わさない。ここで彩音、真帆らが美優にスマホを開くようにつたえ、美優がスマホをあけたところで、親に電話できるか聞く。美優はうなずき、実家に電話をかける。電話が通じたところで父親が出て、美優が泣いていることに気付き、美優は電話越しにやめる、とだけ言う。ここで彩音が美優から受話器を取り上げ、電話を代わり、美優の父に敬意を説明する (コミュ力があること、イベントスタッフ等で場慣れしていることもあり、かなり的確というか、容量を得た対応)。そして心配だからきてあげてほしい点を伝える。その後、美月らが電車で移動し合流。その少し後くらいに、美優の両親が来た。身なりは整っており、それなりにお金がある人達 (華美ではないが品がある) という点はしっかり伝わるが、息を切らし、汗をかいている。どうやら娘のために急いで駆け付けたことがわかる。美優はまだ涙を流している。ここで両親と美優が会話をする。そこで彩音らが一旦前にでて、自分たちは美優を大切な友達だと思っていること、今逃げ出すと美優はこの先も引きずると思うこと、こういう時に支えあうのが友達だと思っていること、美優と一緒に卒業したい、ということを両親に伝え、どうか美優に大学を続けさせてほしいと頭を下げる。これに健太がすぐ続き、のこりの面々も同じように同調する。ここで美優の両親は驚き、父親は「美優は良い友達をもった」という。父は美優に、大学をつづけてこの人たちと一緒に卒業すること、このつながりは一生のもの、ということを伝える。美優はうつむく。彩音らはお礼を言う。そして彩音ほか数名が美優の父と何かあった時のために連絡先を交換し、美優の両親は美優の下宿先を後にした。これを踏まえてエピソードをつくって。

A

月曜日・夕方

美優の部屋

タクシーが静かにマンションの前へ止まる。


彩音は改めて周囲を見回した。

「……やっぱり、すご。」

真帆も思わず頷く。

美優が住んでいるのは、

ファミリー向けの広い分譲マンション。

設備も管理も行き届いている。

以前一度来た時にも驚いたが、

改めて見ても「親御さんが娘を大切にしている」ことが伝わる部屋だった。


玄関を開ける。

美優は靴も揃えず、

そのままリビングへ歩く。

ソファに座る。

いや、

座ったというより、

崩れ落ちた。


彩音が隣へ。

真帆は反対側へ。

二人とも何も急かさない。

ただ、

そばにいる。


十分ほど経った。

泣き方は少しだけ落ち着いてきた。

しかし、

まだ涙は止まらない。


彩音が小さく聞く。

「……美優?」

返事はない。


真帆も優しく声を掛ける。

「今日は休もう。」

「ご飯だけでも食べよ?」


長い沈黙。


そして。

本当に消え入りそうな声で、

美優が初めて口を開いた。


「……大学」


二人が顔を上げる。


「……やめる。」


「やめたい」

ではない。


「やめる。」


決めた人の言い方だった。


部屋が静かになる。


彩音は首を振った。

「それは違う。」


美優は俯いたまま。


真帆も続ける。

「今日だけで決めることじゃない。」


返事はない。


「……。」


「美優。」


何を言っても、

届いていない。


彩音は少し考えた。

そして。

「スマホ開ける?」


美優は反応しない。


「お願い。」


数秒後。

ゆっくりスマホを取り出した。


彩音。

「お父さんに電話できる?」


少し迷って。

美優は頷いた。


電話。


数回のコール。


「もしもし。」


父だった。


「美優?」


一言で異変に気付く。


「……。」


「どうした?」


電話口から聞こえるのは、

すすり泣き。


そして。


「……やめる。」


それだけ。


父は何か言おうとした。

その瞬間。


彩音が小さく言う。

「ごめん、代わるね。」


美優も抵抗しない。


彩音が受話器を受け取る。


「初めまして。」


「大阪大学薬学部の小川彩音と申します。」


イベントスタッフや受付の経験で培った、

落ち着いた声だった。


彩音は、

余計な感情を入れず、

時系列で説明する。


数学の授業。


実習。


昼休み。


今日の様子。


美優が限界だったこと。


「今、一人にしてはいけないと思っています。」


「もし可能でしたら。」


「来ていただけませんか。」


電話の向こう。


父はすぐ答えた。


「分かりました。」


「すぐ向かいます。」


「ありがとうございます。」


電話が切れる。


彩音は深く息を吐いた。


「来てくれる。」


真帆も少し安心する。


その後。


授業を終えた健太たち。


坂井。


直人。


栞。


そして美月。


順番に部屋へ集まってくる。


誰も騒がない。


静かに。


美優の様子を見る。


さらに二十分ほど。


インターホン。


健太が玄関を開ける。


そこにいたのは、

美優の両親だった。


二人とも身なりは整っている。


上質だが派手ではない服。


品のある雰囲気。


一目で、

裕福な家庭だと分かる。


しかし。


父も母も、

息を切らしていた。


額には汗。


急いできたことが、

何より伝わる。


「美優。」


母が駆け寄る。


父も娘の前にしゃがむ。


美優はまた涙を流す。


父は責めない。


「大丈夫。」


「お父さん来た。」


それだけだった。


しばらく親子だけの時間が流れる。


そして。


彩音が立ち上がった。


「少しだけ、お話してもいいですか。」


父が頷く。


彩音は、

美優の両親へ向かって、

深く頭を下げた。


「私たちは。」


「美優を大切な友達だと思っています。」


「今日、本当に辛かったと思います。」


「でも。」


「ここで辞めてしまったら。」


「美優はきっと、この先もずっと今日のことを引きずると思います。」


真帆が続く。


「友達って。」


「こういう時に支え合うものだと思っています。」


「私たちは。」


「美優と一緒に卒業したいです。」


健太がすぐ続いた。


「今日の美優見て。」


「一人にはできへんと思いました。」


「勉強でも。」


「遊びでも。」


「また一緒にやっていけばいい。」


「だから。」


「大学を続けさせてあげてください。」


橋本と坂井はいないが、


直人も。


栞も。


美月も。


静かに頷いた。


美月が短く言う。


「私も。」


「一緒に卒業したいです。」


余計な言葉はない。


でも、

その一言は重かった。


部屋が静かになる。


美優の父は、

しばらく皆を見ていた。


そして。


ゆっくり頭を下げた。


「……ありがとうございます。」


父は娘を見る。


「美優。」


「お前は。」


「本当に良い友達を持ったな。」


美優は泣きながら俯いている。


父は続ける。


「人生には。」


「仕事も。」


「お金も。」


「いろいろある。」


「でも。」


「こうして本気で心配して。」


「一緒に卒業したいと言ってくれる友達。」


「これは簡単には手に入らない。」


「この繋がりは。」


「一生の財産になる。」


「だから。」


「大学は続けよう。」


「この人たちと。」


「一緒に卒業しなさい。」


長い沈黙。


美優は、

まだ返事ができない。


それでも。


小さく。


本当に小さく。


頷いた。


彩音がほっと息を吐く。


真帆も涙ぐんでいた。


健太は肩の力を抜く。


「よかった……。」


その後。


父は彩音へ向く。


「今日は本当にありがとうございました。」


「もしまた何かあったら。」


「遠慮なく連絡してください。」


彩音も頷く。


「こちらも、お父さんに相談していいですか。」


「もちろんです。」


父は自分の名刺を差し出した。


彩音。


健太。


真帆。


三人は連絡先を交換する。


父は最後に、

もう一度部屋を見回した。


この若者たちが、

娘のために時間を使い、

ここまで集まってくれたこと。


それが何よりありがたかった。


帰り際。


父は静かに言う。


「今日は皆さん、本当にありがとうございました。」


「娘を、これからもよろしくお願いします。」


その言葉に、

部屋にいた全員が静かに頭を下げた。

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